ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「母さん、急に会わせろなんて言うからここに宿を取ったけど、鈴花は忙しいんだよ。今日は夜勤もあるし、明日も明後日もしばらく仕事だからこの旅行での挨拶は諦めてくれ。追々、スケジュールを調整するから」

「せっかく来たんだから、少しくらい――」

「鈴花の仕事の邪魔しないであげてくれ。他のお客さんにも迷惑だから行こう」

鈴花がルームキーを渡すと、隆矢が両親を促してエレベーターの方へと去っていく。

(訂正してくれないと困るんだけど)

そのあとに三組の宿泊客のチェックインを終えて退勤時間になった。

「お先に失礼します」

鈴花は急いでバックヤードに引き上げる。

隆矢の両親の分しか予約がなかったので、隆矢はこのあと自分の家に帰るのだろう。

そこを掴まえて嘘をやめるように言わなければならない。

速足でロッカールームに向かおうとすると、後ろから呼び止められた。

「杏野さん」

振り返ると、怜奈がニヤニヤしながら近づいてくる。

「なにか?」

「さっきの杏野さんの彼でしょ? 親が来てたようだけど、近々結婚するの?」

(うっ、見られてた)

「冴えな――大人しそうな人で、杏野さんにぴったりの彼ね。おめでとう」

(今、冴えないと言おうとした?)

隆矢は大人しくもないが、鈴花と両親の間で嘘がバレないように取り繕う姿がそう感じさせたのかもしれない。

「あの人は元彼です」

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