ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
(どうしてそんなに投げやりなの? もしかして、まだ心の傷は癒えてなかった?)

調子にのれるほど元気だと思っていたのだが、完全には立ち直っていなかったのだろうか。

「ごめんね……」

「悪いと思ってるなら協力しろよ」

「それはできない。夫を悲しませるような嘘はつけないよ」

容姿もスペックも不釣り合いな鈴花が海崎との結婚に不安にならずにいられるのは、彼が惜しみなく深い愛情を感じさせてくれるからだ。

だから自分も同じように海崎に対して誠実でいたい。

まっすぐな視線をぶつけると、手首を握る隆矢の手に力が込められた。

「だったら、離婚して俺と結婚しろよ」

「できないよ。手が痛い。放して」

「俺とよりを戻すまで放さない。出会った頃にお前、言ったよな。東京に戻りたくないなら、この町に住みなよって。今の仕事もお前が紹介したんだ。この町の居心地の良さを教えたのはお前なんだから、責任取れ」

(目が怖い)

体重があっても男性が本気を出せば力ではかなわない。

引き寄せられそうになるのを足を踏ん張って耐えたが、逃げるのは無理なようだ。

(どうしよう。大声を出して助けを呼ぶ? でも騒ぎになったらホテルに迷惑をかけそうで……)

ホテルの正面玄関と百メートルも離れていないのが気になった。

その時、誰かが走ってくる足音がして、振り返るよりも先に鈴花と隆矢の間に割って入った。

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