朝の徒花
1-2. 動揺
ぴーん。
翌朝も同じ時間だった。
まだ薄暗い私の寝室。
目を擦りながら私は布団の中でスマホを手に取った。
画面には見慣れた名前。
「おはよう。今日はちゃんと起きている?」
思わず口元が釣り上がってしまう。
昨日とほとんど同じ内容。
特別なことは何もない。
それなのに、なぜだろう。
一日の始まりにこのメッセージを待ち構えて落ち着かなくなる、そんな自分がいる。
そわそわとした、むず痒さを感じ、私は小さくため息をつきながら返信した。
「ちゃんと起きています、もちろんです。」
間は数秒。
「怪しいな。」
すぐに返ってくる。
相変わらずだ。
画面を見ているだけで笑ってしまう。
その時だった。
ドアをノックしながら旦那さんが私の部屋のドアを開けて顔を覗けてきた。
「マナーがなっていない」とか、「何やっているの、勝手に開けないで」のような言葉は頭に浮かびもしなかった。
旦那さんは寝坊助でいつも8時頃まで声を掛けても起きない。
起きるはずない。
そう勝手に思い込んでいた。
私は反射的にスマホの画面を伏せる。
自分でも理由はわからない。
仕事の同僚との何気ないやり取り、やましい内容ではない。
なのに、なぜか見られたらまずいと思った。
「もう起きていたの?」
夫が眠そうな声を出す。
「うん」
「今日は早いな」
「たまたまだよ」
そう言いながら布団を出る。
スマホはポケットにしまった。
リビングに向かいながら自分に言い聞かせる。
ただのモーニングコール。
寝坊防止。
それだけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
朝食の準備をしていると、夫がコーヒーを飲みながら言った。
「そういえばさ」
「ん?」
「最近、毎朝スマホ鳴っているよな」
一瞬、本当に一瞬だけ手が止まった。
思わずパンを持つ指先に力が入る。
「そう?」
平静を装って返す。
夫は何気ない顔をしていた。
疑っている様子もない。
ただ気付いただけ、それだけだ。
「んー、6時くらい?じゃあ、ゲームの通知かな?イベントが開始しますとかの。」
「今なにかゲームやってるんだ。どんなゲーム?」
「育成系?モンスターをアイテムで育てて戦わせる系の。」
ゲームをやっていることは嘘ではない。
ただ、メールやチャットをしていることは誤魔化してしまった。
仕事の同僚で、朝の連絡も仕事の延長でもある。
そう思った、思おうとした。
でも咄嗟に口から出たのははぐらかしだった。
「ふーん」
夫はそれ以上何も聞かなかった。
それだけを言ってテレビに目を向ける。
会話は終わった。
それなのに、なぜか胸がざわついていた。
朝の日課、愛犬のお散歩で外に出ているとき、信号待ちでスマホを見る。
メッセージ受信通知のアイコンが光っていた。
着信は旦那さんが私の部屋に顔を覗けた頃。
その時刻に、実は続きのメッセージが届いていたようだ。
「疑ってごめん。今日は早起きを頑張って偉いな。」
今読んだメッセージに返信をしておこう、そう思ってスマホに指をかけた。
その瞬間に新しいメッセージが届いた。
さっきの下に続く一文。
「旦那さんとなにかあったの?」
私は思わず息を止めた。
指先が固まる。
どうして分かったんだろう。
少し考えてから返信する。
「別に何もありませんよ。大丈夫です、ただ通知音に気付いて旦那さんが部屋を覗き込んだ。それだけです。」
送信した後、返信が来た。
いつもより少し遅かった。
「そっか」
短い一言。
その文字を見つめながら、なぜか少しだけどホッとした自分を感じた。
だけど、この何気ない朝の出来事が、少しずつ、確実に、私達の日常を変えていく。
ぴーん。
翌朝も同じ時間だった。
まだ薄暗い私の寝室。
目を擦りながら私は布団の中でスマホを手に取った。
画面には見慣れた名前。
「おはよう。今日はちゃんと起きている?」
思わず口元が釣り上がってしまう。
昨日とほとんど同じ内容。
特別なことは何もない。
それなのに、なぜだろう。
一日の始まりにこのメッセージを待ち構えて落ち着かなくなる、そんな自分がいる。
そわそわとした、むず痒さを感じ、私は小さくため息をつきながら返信した。
「ちゃんと起きています、もちろんです。」
間は数秒。
「怪しいな。」
すぐに返ってくる。
相変わらずだ。
画面を見ているだけで笑ってしまう。
その時だった。
ドアをノックしながら旦那さんが私の部屋のドアを開けて顔を覗けてきた。
「マナーがなっていない」とか、「何やっているの、勝手に開けないで」のような言葉は頭に浮かびもしなかった。
旦那さんは寝坊助でいつも8時頃まで声を掛けても起きない。
起きるはずない。
そう勝手に思い込んでいた。
私は反射的にスマホの画面を伏せる。
自分でも理由はわからない。
仕事の同僚との何気ないやり取り、やましい内容ではない。
なのに、なぜか見られたらまずいと思った。
「もう起きていたの?」
夫が眠そうな声を出す。
「うん」
「今日は早いな」
「たまたまだよ」
そう言いながら布団を出る。
スマホはポケットにしまった。
リビングに向かいながら自分に言い聞かせる。
ただのモーニングコール。
寝坊防止。
それだけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
朝食の準備をしていると、夫がコーヒーを飲みながら言った。
「そういえばさ」
「ん?」
「最近、毎朝スマホ鳴っているよな」
一瞬、本当に一瞬だけ手が止まった。
思わずパンを持つ指先に力が入る。
「そう?」
平静を装って返す。
夫は何気ない顔をしていた。
疑っている様子もない。
ただ気付いただけ、それだけだ。
「んー、6時くらい?じゃあ、ゲームの通知かな?イベントが開始しますとかの。」
「今なにかゲームやってるんだ。どんなゲーム?」
「育成系?モンスターをアイテムで育てて戦わせる系の。」
ゲームをやっていることは嘘ではない。
ただ、メールやチャットをしていることは誤魔化してしまった。
仕事の同僚で、朝の連絡も仕事の延長でもある。
そう思った、思おうとした。
でも咄嗟に口から出たのははぐらかしだった。
「ふーん」
夫はそれ以上何も聞かなかった。
それだけを言ってテレビに目を向ける。
会話は終わった。
それなのに、なぜか胸がざわついていた。
朝の日課、愛犬のお散歩で外に出ているとき、信号待ちでスマホを見る。
メッセージ受信通知のアイコンが光っていた。
着信は旦那さんが私の部屋に顔を覗けた頃。
その時刻に、実は続きのメッセージが届いていたようだ。
「疑ってごめん。今日は早起きを頑張って偉いな。」
今読んだメッセージに返信をしておこう、そう思ってスマホに指をかけた。
その瞬間に新しいメッセージが届いた。
さっきの下に続く一文。
「旦那さんとなにかあったの?」
私は思わず息を止めた。
指先が固まる。
どうして分かったんだろう。
少し考えてから返信する。
「別に何もありませんよ。大丈夫です、ただ通知音に気付いて旦那さんが部屋を覗き込んだ。それだけです。」
送信した後、返信が来た。
いつもより少し遅かった。
「そっか」
短い一言。
その文字を見つめながら、なぜか少しだけどホッとした自分を感じた。
だけど、この何気ない朝の出来事が、少しずつ、確実に、私達の日常を変えていく。