尊い推しに溺愛されてます!?
文化祭の後夜祭。
 校舎裏は静かで、遠くから音楽だけが聞こえてくる。

 呼び出された私は、落ち着かないままレンくんの前に立っていた。

「話って……?」

「うん。ちゃんと言いたくて」

 夜風が、彼の髪を揺らす。
 ステージの上で輝く姿とは違う、ひとりの男の子としての顔だった。

「最初は、俺のこと見て真っ赤になってるみうがかわいいって思った」

「そんな理由!?」

「でも、気づいたらそれだけじゃなくなってた」

 レンくんは、私をまっすぐ見つめる。

「芸能人の俺じゃなくて、ちゃんと一条レンを見てくれるのが、みうだけだった」

「……」

「テレビの中の俺がしんどい時も、笑って頑張れたのは、ファンの存在があったから」

「……うん」

「その中でも、みうは特別だった」

 胸が熱くなる。
 泣きそうなくらい、うれしい。

「好きだよ、みう」

「……っ」

「推しとしてじゃなくて、ひとりの男として見てほしい」

「そんなの……」

 無理だ。
 だってもう、とっくに好きだった。
 推しだからじゃない。優しくて、少し意地悪で、でもまっすぐな彼自身を。

「私も、好き……です」

「敬語」

「……好き、レンくん」

「うん」

 次の瞬間、ふわっと抱きしめられた。

「やっと言えた」

「レンくん……」

「これからは、遠くから見てるだけじゃだめ」

「え?」

「俺だけ見て」

 耳元でささやかれて、顔が熱くなる。

「みうの推し、独占したい」

 そんな甘すぎることを言うなんて、聞いてない。
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