もう、幼馴染じゃいられない。
「おはよう、りっくんっ!今日もかっこいいわねぇ…」


「光栄です」


まるで恋する乙女のよう。


目をキラキラさせて、自分より何cmも高い身長の理世を見つめて(拝んで)いる。


すると、理世の耳にお母さんの口が寄せられて……


「むしろ、いっそ雛乃のお婿(むこ)さんになっちゃう?」


!!!???


「ちょ、お母さん!」


「いいじゃないっ、いいじゃない…!あんたが告白しないのが悪いんだから」


「好きじゃないから…!」


「照れなくていいのよ?」


「照れてない……っ!」


で…


「なんで理世は黙ってんじゃい!何か言い返してよ!」


満面の笑みのお母さんの前で、口に手を当てて顔を背けてる。


一瞬見えた口元は緩んでた気がした。


えっ、もしかして……。


喜んでる!?


普段、私の前でもめったに表情変わらないじゃん!


というか、笑ってるところだって結構貴重なのに。


なぜそこで喜ぶ!?


「ひな、行こ」


「あ、はぁいはい」


椅子の上に置いてあるスクールバッグを手に取って、ローファーを履いてから、理世の後ろに歩み寄る。


「ねぇ、ひな。なんで毎日後ろなの?隣でいいのに」


「私は平和な学校生活を送りたいの!恨まれるとかごめんだから!」


隣歩くと、女子たちの視線が痛いの…


だから後ろに居座る私。


「別にいいじゃん。どっちにしろ、俺が守ってあげるから」


そうやって、ドキドキさせないでよ……勘違いしちゃうから…!


「いってらっしゃい、雛乃、りーっくん♡」


うぅ…吐き気を催す天才だよ、お母さん…


「…行ってきます」


ほら!沈黙!引かれてるよお母さん!


少し、沈黙が続いた。


な、何か話したほうがいいのかな……


でも、沈黙が苦しくない……


学校の門に着いたその時、口を開いたのは理世だった。


「…ひな、彩希さん…日に日にああなってくね……」


「それは理世が日に日にかっこよくなってくか……!!」


言ってしまった……カッコいい、と……!


あぁぁぁぁぁぁ―――!!


「ふぅん?今かっこよくなってくって言ったね?」


「っ…これは…不可抗力でっ……!」


「じゃあ、無意識に言ってるってことは…本当に心の底からそう思ってるってことだね?」


意地悪に笑った理世は、目が(くら)むほど……カッコいい。


く、悔しい…!


ジリジリと距離を詰められ、挙句の果てには壁にまで追いやられた。


「やっ…ちょ、離れて!」


「やだ。離れないし。そんな可愛い声出しといて今更離れる?あり得ない。俺が死ぬ」


「し、死ぬ…!?」


「……ひなは一生俺には勝てないよ」


「いっ、いつか絶対に勝ってみせるし!」


「へぇ。なんでか知らないけど強気だね。いいの?」


「何が…って!予鈴鳴った!鳴った鳴った!」


ヤバイよ!!


「るせぇな、鳴ったからなんだよ」


「平穏な学校生活を送りたいつまり!遅刻厳禁!説教回避!!」


「あーね」


「ということでっ!急いだ急いだー!」


「へいへい」



*  *  *



「おはようございます!」


「はい、おはよう。あれ、今日は居ないんだね」


「誰がですか?」


「神崎くんだよ」


「いや、一緒に来まし……へ?居ない…」


はぁ!?


なんで居ないわけ!


「ま、いいか。とりあえず座れー」


「はい」


どこ行ったんだろう、理世……


心の中で、少し寂しいと思う自分に、気が付く余地もなく―――
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