もう、幼馴染じゃいられない。
理世の雪のように真っ白な首に、これまた真っ白な細い腕が絡まっている。
「んんっ…」
理世が顔を動かすたび聞こえる、女の子の甘ったるい声。
あぁ。
キスしてる。
この子が、理世の彼女。
クールで、女嫌いで、私以外の女子とは関わってなかった、理世の………
『カノジョ』。
あぁ、このまま逃げたいのに。
足が動いてくれない。
ふと床に目をやると、ネクタイとリボンが脱ぎ捨てられている。
おそらく、それぞれふたりのもの。
もしかすると、それ以上も―――
涙が頬を流れた。
嫌っ……苦しい…
ねぇ、理世。
私、あんたの特別だと思ってた。
今、気付いたよ。
でも、遅かったみたい。
大好きだよ……理世…。
「雛乃」
「…っ、…え?」
理世の声が、私を呼んだ。
雛乃?ひなじゃなくて…?
私を呼んだのは、切れても、荒れてもいない、正常な呼吸。
涙が衝撃で引っ込んだ。
「ふふっ、キスしてると思った?」
「え、や、その…っ」
う、勘違いしてた…
恥ずかしい…
顔が熱くなって、俯いて隠す。
「かわいーね」
「ひゃ、やだ、やめてよ……!」
首筋に触れた理世の大きな手。
くすぐったくて、反射的に理世から距離を取……れず、逆に抱き寄せられてしまった。
「好きな人、離したくない」
「は…?」
好きな人、って……どう言う…?
「ヘイ、そこのおふたりさん。私のことお忘れではありやせんかー」
!!
「すすすっ、すみません!理世の彼女さんですよね…?」
「「…は?」」
えっ、違うの…?
「はぁ……。私の名前、音春詩遊。声優やってる」
「せ、声優!?」
「そう。だから、今こいつに頼まれて協力してたってわけだわ」
「頼まれて…きょ、協力?」
「ちょ……!」
珍しく顔を赤らめている理世。
「そうよ〜?…ふふ、『キスされてる演技してくれ』って、ね?」
「おい!」
………へっ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!???」