結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
1.助けたカメが現れた。
チャイムが鳴り、ドアを開く――その瞬間まで。
私の世界は、退屈で平凡な日常の中にあった。
ピンポーン。
九月の第三金曜日、午後十時。
玄関の呼び鈴が鳴り、私は「はーい」と答えてドアを開けた。
……ハイ、ここで言い訳をさせてほしい。
都内の単身者用アパートで女の一人暮らし。当然、いつもはこんなたやすくドアを開けたりしない。
けれどこの時、私は酔っていた。さらに友人の寺脇愛美が一緒にいた。
楽しい金曜の夜。二人していい感じに酔っぱらって、小腹が空いたしピザでもとろうかー、とスマホでMサイズピザ二枚を注文したのが三〇分前のこと。
これはもう絶対にピザが届いたものと思い込み、すんなりドアを開けるに決まっている。でしょう!?
けれどドアの前にいたのは、赤い制服姿の配達員ではなかった。そこには初めて見る……でもやたら既視感のある見た目の、見目麗しい外国人のお兄さんが立っていた。
デニムの黒シャツにグレイカラーのカットソー、黒チノパン。足元はゴツめのショートブーツ。取り立てて目立つファッションではないのに、目の前の白人青年は異次元な美を放っていた。
「…………」
予想を越えた存在を前にして、私はフリーズした。
しかし欲望に忠実なこの目は高性能センサーのように動いて、イケメンの頭のてっぺんから足の先までを遠慮なく観察した。
おそらく体の半分あるだろう長い脚。清潔感のあるショートヘアの髪色はアッシュブラウン。高い鼻筋、キリとした形の良い眉。完璧に配置されたパーツの中心では、明るい黄の混じった茶色い瞳が輝く。
私のぶしつけな視線を正面から受け止め、二次元世界から現れたような美形外国人は、ニッコリと微笑んだ。……きっと大天使ミカエルが実在したら、こんな笑顔を見せてくれるんだろう。
「めめめめ愛美ぃ!」
ドアノブを掴んだまま、私は相棒の名前を叫んだ。
「はーい、どしたん?」
呑気な顔で現れた友人に向かって、私は目の前の異邦人を指差し、叫んだ。
「LORのクライヴがいるーーーっ!!!!」
ちなみに「LOR」とは人気シューティングゲーム『レジェンド・オブ・ラディアンス』の略称で、主人公キャラの名前がクライヴなのだ。私はこのクライヴのファンで、実家には彼の抱き枕もある。
「おお?」
私と一緒に廊下を覗いた愛美は、目の前に立つ青年を見て、「ふぉう!」と不思議な声を上げた。
「ほんまや、クライヴや!」
いきなり関西人になって、愛美は「あのー、どちら様?」と冷静に訊ねた。
でも青年は愛美のほうを見ず、ただ私の顔を凝視していた。
私の世界は、退屈で平凡な日常の中にあった。
ピンポーン。
九月の第三金曜日、午後十時。
玄関の呼び鈴が鳴り、私は「はーい」と答えてドアを開けた。
……ハイ、ここで言い訳をさせてほしい。
都内の単身者用アパートで女の一人暮らし。当然、いつもはこんなたやすくドアを開けたりしない。
けれどこの時、私は酔っていた。さらに友人の寺脇愛美が一緒にいた。
楽しい金曜の夜。二人していい感じに酔っぱらって、小腹が空いたしピザでもとろうかー、とスマホでMサイズピザ二枚を注文したのが三〇分前のこと。
これはもう絶対にピザが届いたものと思い込み、すんなりドアを開けるに決まっている。でしょう!?
けれどドアの前にいたのは、赤い制服姿の配達員ではなかった。そこには初めて見る……でもやたら既視感のある見た目の、見目麗しい外国人のお兄さんが立っていた。
デニムの黒シャツにグレイカラーのカットソー、黒チノパン。足元はゴツめのショートブーツ。取り立てて目立つファッションではないのに、目の前の白人青年は異次元な美を放っていた。
「…………」
予想を越えた存在を前にして、私はフリーズした。
しかし欲望に忠実なこの目は高性能センサーのように動いて、イケメンの頭のてっぺんから足の先までを遠慮なく観察した。
おそらく体の半分あるだろう長い脚。清潔感のあるショートヘアの髪色はアッシュブラウン。高い鼻筋、キリとした形の良い眉。完璧に配置されたパーツの中心では、明るい黄の混じった茶色い瞳が輝く。
私のぶしつけな視線を正面から受け止め、二次元世界から現れたような美形外国人は、ニッコリと微笑んだ。……きっと大天使ミカエルが実在したら、こんな笑顔を見せてくれるんだろう。
「めめめめ愛美ぃ!」
ドアノブを掴んだまま、私は相棒の名前を叫んだ。
「はーい、どしたん?」
呑気な顔で現れた友人に向かって、私は目の前の異邦人を指差し、叫んだ。
「LORのクライヴがいるーーーっ!!!!」
ちなみに「LOR」とは人気シューティングゲーム『レジェンド・オブ・ラディアンス』の略称で、主人公キャラの名前がクライヴなのだ。私はこのクライヴのファンで、実家には彼の抱き枕もある。
「おお?」
私と一緒に廊下を覗いた愛美は、目の前に立つ青年を見て、「ふぉう!」と不思議な声を上げた。
「ほんまや、クライヴや!」
いきなり関西人になって、愛美は「あのー、どちら様?」と冷静に訊ねた。
でも青年は愛美のほうを見ず、ただ私の顔を凝視していた。