結婚秒読みのアラサー女子、助けたカメに告られる。
「あぁ……ようやく会えた……」
 感極まった表情で、彼が言った。
「信じられない。夢みたいだ……」
(日本語……)
 てっきり英語かドイツ語かが飛び出すと思ったが(ちなみにクライヴはオーストリア人設定)、とても流暢な日本語を聞いて、私はポカンとした。
「本当に信じられない……。ナギサが僕の目の前にいるなんて……」
 クールなゲームキャラそっくりな見た目で、美形外国人は感動に声を詰まらせた。
「突然会いにきたから驚いたでしょう? でも僕は、どうしてもナギサに会いたかったんです」
 感激しきりの様子だったお兄さんは、そこでふと、固まったまま動かない私を見て腰をかがめた。
「ナギサ? 大丈夫ですか?」
 綺麗すぎる顔に至近距離で覗き込まれて、私は「ひゃあっ!」とマヌケな悲鳴を上げた。
「あああの、あなたはいったい誰なんですか!? どうして私の名前を知っているんですか?」
「ナギサ……。もしかして僕のことを忘れてしまったんですか?」
「は?」
「僕は昔、あなたに助けていただいたカメです!」
「うわ、やっば……」
「え?」
 思わず思考がそのまま言葉になって出て、ようやく冷静になった私は、「いやいやいや」と左手を振った。
「あのー。すみませんが、どなたかとお間違えじゃないですか?」
(……これは、下手に刺激するとマズイ相手だ)
 そう判断した私は、努めてにこやかに諭すような口調で言った。
「どなたかお知り合いの家を訪ねられたんですよね? その方もナギサさんって仰るんですね。それで、住所はここで合ってますか?」
「何を言っているんですか、ナギサ! 僕はあなたに会いにきたんです!」
「たしかに私の名前は汀(なぎさ)ですが、私はあなたのことを存じ上げません」
「そんな……!」
 彼は真剣そのものの顔つきで言った。
「僕はナギサに会うために日本に来ました! ナギサ、本当に僕のことがわからないんですか!?」
 そのタイミングで、目当てのピザが到着した。
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