溺愛、しないで


室内は薄暗く、打ちっぱなしのコンクリートの壁がさらに冷たい印象を感じさせた。


医療用パーテーションがいくつか置いてあり、硬い金属のようなものが触れ合う音がその向こう側から聞こえてくる。


これから何をされるのか分からない恐怖で心臓が早鐘(はやがね)を打つ。


自分から目を離している今が逃げるチャンスだと思い浮かぶが、やはり意に反して足が動かない。


怖い。逃げたい。でも逃げられない。でも逃げないと。


冷や汗をかきながらそんな葛藤(かっとう)を繰り広げていると、パーテーションの向こう側から彼が出てきたが、何故かその両手にはゴム手袋がはまっていた。

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