独占愛は夜より深く。

第一章

雨の匂いが残る深夜の校門前。
街灯の下で立ち止まった私の視線の先に、黒い影があった。

「遅い」

低くて、冷たい声。
それだけで誰かわかる。

月城 要。

この街で知らない人はいない。
暴走族 月影 の総長。
月のない夜みたいに静かで、触れたら終わりだと噂される男。

黒いパーカーのポケットに手を入れたまま、要はまっすぐ私を見る。
何も言わないのに、その目だけで逃げられないと思わされる。

「……なんでいるの」

「迎え」

「頼んでない」

「でも来た」

それだけ言って、要は私の手から鞄を取った。
強引なのに、扱いは妙に丁寧で、余計に腹が立つ。

「返して」

「嫌だ」

「は?」

「おまえを一人で帰す気もない」

いつもそうだ。
要は私の気持ちなんて確認しない。
勝手に現れて、勝手に守って、勝手に心を乱していく。

校門を出た瞬間、遠くでバイクの音が響いた。
月影のメンバーだろう。
黒い車体に銀のライン。
夜の街に溶けるようなその集団は、まるで要そのものみたいだった。

「最近、変なのにつけられてる」

歩きながら、要が何でもないことみたいに言った。

「……え」

「三日前も昨日も今日も。気づいてないのはおまえだけ」

背中がひやりとする。
思い返せば、視線を感じた気はした。
でも、気のせいだと思っていた。
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