独占愛は夜より深く。
「なんでそんなこと……」

「調べたから」

「調べた?」

「おまえのことは全部知ってたい」

さらっと落とされた言葉に、心臓が跳ねる。

この人はたぶん、好きの言い方を知らない。
優しく包むんじゃなくて、逃げ道ごとふさいでくる。

「紗菜、おまえ兄貴の部屋から何を持ち出した」

一気に空気が変わった。

足が止まる。
要も止まった。

兄が死んでから、半年。
事故として処理されたその死に、私はずっと違和感を抱いていた。
兄の部屋に残されていた小さな鍵。
誰にも見つからないように、私はそれを制服の内ポケットに隠している。

「……知らない」

「嘘」

次の瞬間、ぐいっと腕を引かれた。
細い路地裏。
冷たい壁に背中が当たって、逃げ道が消える。

目の前には要。
近すぎて、呼吸すら乱れる。

「要……」

「俺に隠すな」

鋭い目。
でも、その奥にあるのは怒りだけじゃない。
苦しいほどの焦りと、壊れそうな執着。

要の指先が、私の頬に触れる。
ぞくりと震えた。

「おまえに何かあったら、俺が壊れる」

落ちてきた声は低くて、ひどく静かだった。
静かなのに、叫びみたいだった。

「どうしてそこまで……」

震える声で聞くと、要は少しだけ目を細めた。

「わかんないのか」

「わかんない」

「……じゃあ教える」

彼の顔が近づく。
唇が触れる寸前で止まった。

「俺は、おまえが好きだ」

息が止まる。

「ずっと前から。誰にも渡したくない。逃がす気もない」

甘い言葉のはずなのに、胸が苦しい。
それは告白というより、きっと宣告だった。

要に好かれるということは、普通の恋なんかじゃ済まない。
深く沈んで、二度と戻れないところまで連れていかれる。

「……そんな言い方、ずるい」

「ずるくていい。おまえが俺のほうを見るなら」

そのときだった。

路地の奥から、複数の足音が響いた。
要の目が一瞬で冷える。

振り向いた先にいたのは、見知らぬ男たち。
笑っているのに、目だけが笑っていない。

「その子に用がある」

男の一人がそう言った瞬間、要が私を背中に隠した。

「下がってろ」

「でも……」

「紗菜」

名前を呼ばれて、言葉を失う。
その声が、あまりにも静かで怖かったから。

要は一歩前に出る。
月明かりも届かない路地裏で、その横顔だけが冷たく浮かんだ。

「こいつに触れたら、許さない」

短いその一言に、男たちの空気が変わる。
月影の総長。
その名が持つ重さを、相手も知っているのだろう。

それでも男たちは引かない。
じりじりと距離を詰めてくる。
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