独占愛は夜より深く。

第四章

碧が離れていったあとも、倉庫の空気はまだ少し熱を残していた。

要の指先が頬に触れたまま、私は息をするのも忘れそうになる。
こんな近さ、だめだ。
心臓の音まで聞かれそうで、落ち着かない。

「顔、赤い」

低い声でそう言われて、余計に熱くなる。

「……要のせいでしょ」

「俺のせいなら、そのままでいて」

ずるい。
そんなふうに平然と言えるのが、本当にずるい。

逃げるように視線をそらそうとしたのに、要の指がそっと顎に触れて、また正面を向かされる。

「そらすな」

「無理……近い」

「近くしてる」

即答だった。
恥ずかしくてたまらないのに、要は少しもためらわない。

そのまま私の額に、自分の額をこつんと重ねる。
体温が近すぎて、胸の奥までじんわり熱くなった。

「碧に触られて、嫌だった」

ぽつりと落ちた声は、さっきよりもずっとやわらかい。
怒っているというより、拗ねているみたいだった。

「髪、直しただけだよ」

「それでも嫌だ」

「子どもみたい」

そう言うと、要は少しだけ目を細めた。

「おまえのことになると、たぶんそうなる」

その言葉が甘すぎて、胸がきゅっと苦しくなる。

要は普段、こんなふうに気持ちを見せる人じゃない。
冷たくて、静かで、何を考えているかわからない。
なのに今は、私にだけ全部隠さない。
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