待ってください長谷川くん!
8話
カタカタとキーボードを叩く音が、オフィスに響く。
香織は集中しているのか、開いたドアの音にも気づかないままだった。
静かにドアを閉めた誠は、香織の真剣な表情を遠目に見つめた。
そして、そのままゆっくりと香織に近づいていった。
「我が社は、サービス残業は禁止ですよ?」
「わっ…!」
香織の背後から声を掛けられると、肩がビクッと跳ねた。
隣に座る誠の足組する姿を見れば、少し気まずそうにする香織。
「…サービスではなくて…」
「お人好しが過ぎる仕事は、損しかないと思うけど?」
「お、お人好しって…早川さんが通院日だったから…」
口籠る香織を見る誠は、デスクに頬杖をついたまま、じっと見つめた。
誠の視線を感じつつも、香織はキーボード操作を再開する。
「…あの人、嘘ついてたよ。おかんセンパイがする業務じゃないよね?」
「おかっ………」
「他人に自分の仕事を押し付ける同僚って、チームワーク乱すと思わない?結局はセンパイの手柄を横取りするわけじゃん?」
「…そうだったとしても…横取りとは思わない」
キーボードから手を離さない香織は、少し寂しそうに笑って答えた。
「この資料ひとつ作るのに、数人の人たちが時間を削ってくれたんだから…できる人が仕上げて、先方に満足してもらえる方が、私は効率がいいと思ってます」
「…僕には一生理解できないな~それ」
「え…?」
「無駄が多すぎる。修正もいちいち確認取って報告して…時間の無駄だし。最初から完璧にできないなら、するべきじゃないでしょ」
誠の言葉を聞いた香織は、キーボードを叩いていた手を、ついに止めた。
「それは違うと思います。例えミスをしても、“経験”で得られるものもあるから…」
「…は…?何それ…」
椅子を滑らせて、香織の隣にやってくる誠。
少し怯む香織は、誠とは反対の方へ体を引いた。
「僕、そんなこと初めて聞いた。センパイはそれで損してるって周りから思われてるって考えたことないの?」
「……それは…なかったな…」
「…ふはっ…なんだそれ…!でも…ふぅん?」
ふき出した誠は、今度はニヤニヤとした顔で香りを見つめる。
「なーんか、センパイのそういう考え、知りたくなってきたな~」
「…ま、またからかって…!別に長谷川くんのことを言ったりしないけど、私は一応、君の指導係で…!」
「ダメ男に引っかかるセンパイの指導ってなーにー?」
顔を赤くした香織は、反論しようとして口を開きかけたが、エンターキーを押して、資料作成を終えた。
立ち上がって、印刷機から出てきた資料を確認していると、背後から誠が印刷機へ手を置いて、香織の真後ろに立った。
香織は集中しているのか、開いたドアの音にも気づかないままだった。
静かにドアを閉めた誠は、香織の真剣な表情を遠目に見つめた。
そして、そのままゆっくりと香織に近づいていった。
「我が社は、サービス残業は禁止ですよ?」
「わっ…!」
香織の背後から声を掛けられると、肩がビクッと跳ねた。
隣に座る誠の足組する姿を見れば、少し気まずそうにする香織。
「…サービスではなくて…」
「お人好しが過ぎる仕事は、損しかないと思うけど?」
「お、お人好しって…早川さんが通院日だったから…」
口籠る香織を見る誠は、デスクに頬杖をついたまま、じっと見つめた。
誠の視線を感じつつも、香織はキーボード操作を再開する。
「…あの人、嘘ついてたよ。おかんセンパイがする業務じゃないよね?」
「おかっ………」
「他人に自分の仕事を押し付ける同僚って、チームワーク乱すと思わない?結局はセンパイの手柄を横取りするわけじゃん?」
「…そうだったとしても…横取りとは思わない」
キーボードから手を離さない香織は、少し寂しそうに笑って答えた。
「この資料ひとつ作るのに、数人の人たちが時間を削ってくれたんだから…できる人が仕上げて、先方に満足してもらえる方が、私は効率がいいと思ってます」
「…僕には一生理解できないな~それ」
「え…?」
「無駄が多すぎる。修正もいちいち確認取って報告して…時間の無駄だし。最初から完璧にできないなら、するべきじゃないでしょ」
誠の言葉を聞いた香織は、キーボードを叩いていた手を、ついに止めた。
「それは違うと思います。例えミスをしても、“経験”で得られるものもあるから…」
「…は…?何それ…」
椅子を滑らせて、香織の隣にやってくる誠。
少し怯む香織は、誠とは反対の方へ体を引いた。
「僕、そんなこと初めて聞いた。センパイはそれで損してるって周りから思われてるって考えたことないの?」
「……それは…なかったな…」
「…ふはっ…なんだそれ…!でも…ふぅん?」
ふき出した誠は、今度はニヤニヤとした顔で香りを見つめる。
「なーんか、センパイのそういう考え、知りたくなってきたな~」
「…ま、またからかって…!別に長谷川くんのことを言ったりしないけど、私は一応、君の指導係で…!」
「ダメ男に引っかかるセンパイの指導ってなーにー?」
顔を赤くした香織は、反論しようとして口を開きかけたが、エンターキーを押して、資料作成を終えた。
立ち上がって、印刷機から出てきた資料を確認していると、背後から誠が印刷機へ手を置いて、香織の真後ろに立った。