恋のメンテナンスは必要ですか?
 (まじかぁ……)
 
 詳しくはわからないが、自分と住む世界の違う人間だということだけはよくわかった。
 
 腕につけた時計を見ると時刻は二十時を過ぎた頃。
 明日は元々半休をもらっていて午後からの出勤。
 いつもならめんどくさいと断ってしまうところだが、彩はわずかに湧いた親近感から少しだけ翔に興味が湧いてしまっていた。
 
 決してそれはピンク色のような感情ではない。
 ただ気になるという好奇心。
 この神崎翔という人間の全貌が。
 
『……本当に少しだけですけど、いいですか?』
 
 悩みながらも彩は翔の誘いへ乗ることにした。
 自身の貞操観念の固さには自信もある。
 あと一杯くらい飲んだところでそんなに変わらないだろう。

 翔は嬉しそうに口角を上げた。

『ありがとうございます。下に車を呼ぶので居酒屋までは車で——』
『そんなに離れた場所なんですか?』
 
『いえ……徒歩で10分くらいのところですが』
『10分……』

 彩は視線を翔に向け『そのくらいなら歩いて行きませんか?』と提案する。

 彼は驚いたように目を丸くした。

『……いいんですか?』
『? はい。私、冬が好きなんです。クリスマスシーズンで街中も綺麗ですし。せっかくだから帰りは冬を感じて帰りたいと思っていたので』

 ついでに酔いを少しでも冷ましておきたいという狙いもあるが、それは言わなくてもいいだろう。

『いいですね、それ』

 心の底から喜ぶような声に思わず翔をじっと見つめると、彼は優しい笑顔で目を輝かせていた。
 
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