恋のメンテナンスは必要ですか?
電話越しでも、翔が微笑んでいるのがわかった。
なんだか自分まで嬉しくなって微笑んでしまう。
『店は俺が手配しておくよ。少し早いけど十時頃迎えに行ってもいいかな?』
「はい。」
ランチの誘いを承諾してもらい安堵していると翔が『……ははっ』と笑った。
「?」
『いや、ごめん。年甲斐もなく舞い上がってしまって』
電話越しから翔の喜びが伝わってきて自分の心臓がうるさい。
顔が、火照る。
「どうしてそんな、私に興味を……?」
『どうして……か。彩さんは自分が思っている以上に魅力的だということを気づいた方がいいよ』
「えっ」
『……夜ももう遅い、そろそろ寝ないとね』
「あ、はい……」
会話の間に静寂が流れた。
……名残惜しい。そう思ってしまっている自分がいる。
『……明日、起きたらメッセージを送ってもいいかな?』
翔の提案に嬉しくなって声が明るくなる。
それに甘えるように言った。
「じゃあ私も、起きたら送りますね。」
『ありがとう。……おやすみ、彩さん』
「……おやすみなさい」
——プツッ。
通話が切れた。
何か足りなくなったような感覚に窓の外を覗く。
窓の外には閑静な住宅街があるだけで彩の寂しさをより強くした。
「はぁ……意思弱すぎる私……」
恋愛なんてって思ってたのに。
ランチに誘う気なんてなかった。
謝って少し話すだけだったのに。
『会って話したい——』と、欲が出てしまった。
「……寝よう」
自分に芽生え始めた感情から目を背けるように、彩はカーテンを閉め、布団に潜る。
電気を消して目を閉じた。
*
……——「みつけた。」——
住宅街の暗闇に溶け、【葉山】と書かれた表札を見つめる男。
男は粘着質な笑みを浮かべ、悦に浸った。