恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


「はい。急で本当にすみません」

『大丈夫だよ。葉山さん一回も休んだことないんだから、こういう時は遠慮なく休んで』
「ありがとうございます」
『それにしてもストーカーとは……警察には連絡したのかい?』
「元々相談はしていたのですが……今連絡して警察がくると自分の家だとバラすようなものになりそうで……」
 院長は『そうか……難しいね』と悩ましげな声で言った。

『仕事は大丈夫だから、自分を優先してね。何かあったらすぐ電話しておいで』
「はい」

 院長との通話を切って、外から見えないように窓の外を覗く。
 車はまだ動く様子なく家の前に停まったまま。
 恐怖が彩の心を支配した。


 ——『別れない、俺は絶対……彩と……っあやっ』
 ——『いやっ!やめて!いや!!』
 
 耳を塞ぎ、うずくまる。

 誰にも話せない無理やりされた嫌な記憶を思い出し、息苦しくなった。
 ハッハッハッと途切れ途切れな息を吐き、意識が飛びそうになる。

(……大丈夫……大丈夫)
 何度も耐えてきた呼吸を一人で抑え込む。
 今は意識を飛ばすわけにいかない……何より両親には、知られたくない。

 時間をかけてなんとか落ち着く。
 疲れてしまい、そのままベッドへ横になった。
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