恋のメンテナンスは必要ですか?
「神崎さん。この度は息子さんの開業記念パーティーにお招きいただき、ありがとうございます。」
「彩さん、こちらこそきてくれてありがとう。相変わらず可愛らしく礼儀正しい素敵な子だ。」
穏やかな雰囲気に上品さも兼ね備えるロマンスグレーの男性。
父の昔からの知人で今回のパーティーの主催者でもある。
神崎進 五十三歳。
日本のトップソムリエとして活躍、数多くのコンクールでも優勝。
何かの会長もしていると父が言っていた。
他のパーティーでも何度かお会いし、その度に彩が一人で困っていると声をかけてくれる。
彩にとって信頼できる大人の一人だった。
今回のパーティーは神崎さんの息子さんの開業記念パーティーだと父から聞いている。
(ん……?)
あらましを思い出し、引っかかる。
あれ、私の隣にいる男も『神崎』って名前じゃ……?
一人心の中で疑問を抱えるが、答えはすぐに出た。
「なんだ翔。もう彩さんと話したのか」
「父さんが紹介してくれるって言ったのに全然してくれないから自分で声をかけたよ」
「あっはは!それはいい!自分から行くくらいの根性がないとな!」
ナンパ男だと思っていた人は今回の主役である息子さんだった。
さっきまで心の中で思っていたことを思い出し、汗をかく。
(た、態度に出してなくて良かった……!)
進の会話に微笑みながら、彩は心の中の叫びを誤魔化した。