恋のメンテナンスは必要ですか?
「……なにかご用ですか?」
「ああ、失礼しました。私は神崎翔と申します。」
「どうも……葉山、彩です」
「彩さんはワインお好きですか?」
翔はゆっくりと彩の横に立つ。
隣に立つ出会ったばかりの男と距離をとりながら、彩は答えた。
「あんまり飲まないですね。でも、最近友人と白ワインを飲んで好みだったので。この白ワインは前飲んだのと違う味ですが、気に入りました。」
「それは良かった。今回の白ワインは果実の香りがしっかりと香る、複雑で奥深い味わいのものを選んでみたんです。せっかくの開業記念パーティーなのに、普通なのもつまらないでしょう?」
「……すみません、複雑で奥深いって具体的にはどういうことを言うんですか?」
「あぁ、うーん。いろいろな香りと味わいがあるってことですかね。そのワインは時間経過で味も変わるんですよ」
「へぇ……凄い」
翔のワイン談義に思わず聞き入る。
時間で味が変わるなんて面白い、と彩が手元のワインを見つめ目を輝かせていると、さっきまで楽しそうに遠くで話していた父が誰かを連れてこちらに帰ってきていた。
「彩ー!悪いな、一人にして!」
彩は父の何度も聞いてきた謝罪に呆れるが「いいよ」と諦め、許す。
父の隣に立つ人へ目をやると、その人は彩も面識のある男性だった。
彩は姿勢を整え、微笑み、会釈する。