恋のメンテナンスは必要ですか?
第二十一話 「彼氏」
翔の家に住み始めて、数日が経った。
今日は樹と約束した休み前。
週末といってもうちの歯科は明日も仕事だけれど。
この数日、翔の車で朝は仕事に向かい、帰りは迎えにいけないから車を送ると言われたけれど、流石に帰りまでは申し訳なくて電車で帰っている。
(夜、樹と何を食べようかな)
考えながら午前の診療を過ごしていた。
*
午後の休憩に入り、彩は耐えられずスタッフルームから逃げ出し診察室へ。
「はぁぁぁ……」
診察室の扉を閉めて患者用の椅子に座る。
背もたれに体を預け、全身の力を抜いた。
「久々にくるなぁ……」
元カレのストーカー、父の入院、急に始まった同居生活。
数日前から新たに加わった、杏菜からの露骨な嫌がらせ。
この数日で怒涛にいろんなことが起きて疲れた。
前なら流すことのできた嫌がらせも余裕のない今ではしんどい。
「地味に小さい嫌がらせが続くのもちりつもなんだよね……」
疲れ切った彩はボタンを操作して背もたれを倒す。
次の診療は二時間後。
スタッフルームでみんなとゆっくり過ごせばいいのだけれど、それができないのは辛い。
でもちょっとだけ一人で過ごしたい気分でもあったのでこれはこれでいいかとも思う。
無心で天井を見つめた。
考える。
なんで露骨な嫌がらせがまた始まってしまったのか。
思い当たるのは一つだけだった。
(翔さんだよね……)
23歳という歳を考えたら、もう少し大人になって欲しいと思ってしまうのだけれど。
こんなことを本人に言ったらまた泣かせてしまうだろうか。
でも……。
「うーん」
腕を組んで悩んだところで解決するわけもなく。
休憩時間が減っていくばかりだった。