恋のメンテナンスは必要ですか?
*
彩が部屋を出ると、翔は一人余裕なさそうにテーブルに手をつく。
「…………同僚って男だよな」
電話で聞こえてきたわずかな声。
その声は確実に男だった。
溢れてくる焦燥感、翔は自分の理性を抑えることに必死になる。
*
風呂上がり。
洗面所で頭を乾かす。
鏡に映る自分を見つめながら、また今日の出来事を思い出してしまった。
——『俺、彩が好きなんだけど』
樹からの告白。
まさか自分のことを好きだったなんて、全く気づかなかった。
大学時代、出会った時は冷たく淡々としていて女子に対して距離を置いているように見えたし。
それが自分にとっては居心地が良くて、気づけばよく話す仲になって。
樹も私なら異性だと意識しなくていいからよく絡んでくるんだと思っていた。
「……はぁ」
大切な友人との関係性が変わってしまう。
もう、後戻りのできない出来事に複雑だった。
樹は自分にとってそばに居るのが当たり前の存在。
でも……
彩はドライヤーを止めて櫛を通す。
「樹と付き合う……?」
想像できない。
思考の糸玉を絡ませながら洗面所を出ようと扉を開ける。
目の前に翔が立っていた。
「翔さん?」
彩は驚きつつも翔の拳を上げたまま固まる姿勢に扉をノックしようとしていたことに気づく。
翔は衝撃を受けたように瞳を揺らしながら、ゆっくりと彩に聞いた。
「……誰かと、付き合うんですか?」
「へっ?!いや!?違くて!」
何気なく呟いた一言を翔に聞かれてしまった。
今日は何度失態を繰り返せば気が済むのか。彩は焦る。
「ど、同僚に、今日告白されて……大学からの友人で異性として意識したことなんかなかったので……どうしたものかと悩んでいて……」
「…………」
沈黙。
静けさが怖い。
翔の表情は何を考えているのかわからなくて、ただ美しい顔が無表情で固まっている。
「すみません……寝ますね。おやすみなさい」
たまらず話を終わらせて翔の横を通り過ぎようとした。
体を壁側に寄せ、彼の横を——
「……っ」
部屋へ戻ろうと歩き出した体が思い切り抱きしめられる。
急に体を包み込まれ、目を見開いた。
翔は彩を後ろから強く抱きしめる。
「ごめん。こんなことしたらダメだって、わかってる。」
「なのに、彩が……離れていくかもしれないって思うと動悸がして、酷く胸が痛い。」
翔は彩を抱きしめ、その肩に顔を埋めたまま。
「出会って、暮らし始めて。彩を知るたびにどんどん惹かれて」
翔は彩の体から手を離した。
離された腕の温もりがまだわずかに残っている。
翔は吸い込まれそうなほど強い視線をこちらに向け、言った。
「彩が好きだ。俺と付き合ってほしい。」
翔から放たれた言葉に彩は口を閉ざせないまま。
気づけば、朝になっていた。
彩が部屋を出ると、翔は一人余裕なさそうにテーブルに手をつく。
「…………同僚って男だよな」
電話で聞こえてきたわずかな声。
その声は確実に男だった。
溢れてくる焦燥感、翔は自分の理性を抑えることに必死になる。
*
風呂上がり。
洗面所で頭を乾かす。
鏡に映る自分を見つめながら、また今日の出来事を思い出してしまった。
——『俺、彩が好きなんだけど』
樹からの告白。
まさか自分のことを好きだったなんて、全く気づかなかった。
大学時代、出会った時は冷たく淡々としていて女子に対して距離を置いているように見えたし。
それが自分にとっては居心地が良くて、気づけばよく話す仲になって。
樹も私なら異性だと意識しなくていいからよく絡んでくるんだと思っていた。
「……はぁ」
大切な友人との関係性が変わってしまう。
もう、後戻りのできない出来事に複雑だった。
樹は自分にとってそばに居るのが当たり前の存在。
でも……
彩はドライヤーを止めて櫛を通す。
「樹と付き合う……?」
想像できない。
思考の糸玉を絡ませながら洗面所を出ようと扉を開ける。
目の前に翔が立っていた。
「翔さん?」
彩は驚きつつも翔の拳を上げたまま固まる姿勢に扉をノックしようとしていたことに気づく。
翔は衝撃を受けたように瞳を揺らしながら、ゆっくりと彩に聞いた。
「……誰かと、付き合うんですか?」
「へっ?!いや!?違くて!」
何気なく呟いた一言を翔に聞かれてしまった。
今日は何度失態を繰り返せば気が済むのか。彩は焦る。
「ど、同僚に、今日告白されて……大学からの友人で異性として意識したことなんかなかったので……どうしたものかと悩んでいて……」
「…………」
沈黙。
静けさが怖い。
翔の表情は何を考えているのかわからなくて、ただ美しい顔が無表情で固まっている。
「すみません……寝ますね。おやすみなさい」
たまらず話を終わらせて翔の横を通り過ぎようとした。
体を壁側に寄せ、彼の横を——
「……っ」
部屋へ戻ろうと歩き出した体が思い切り抱きしめられる。
急に体を包み込まれ、目を見開いた。
翔は彩を後ろから強く抱きしめる。
「ごめん。こんなことしたらダメだって、わかってる。」
「なのに、彩が……離れていくかもしれないって思うと動悸がして、酷く胸が痛い。」
翔は彩を抱きしめ、その肩に顔を埋めたまま。
「出会って、暮らし始めて。彩を知るたびにどんどん惹かれて」
翔は彩の体から手を離した。
離された腕の温もりがまだわずかに残っている。
翔は吸い込まれそうなほど強い視線をこちらに向け、言った。
「彩が好きだ。俺と付き合ってほしい。」
翔から放たれた言葉に彩は口を閉ざせないまま。
気づけば、朝になっていた。