恋のメンテナンスは必要ですか?
第二十七話 「辞めます」
週休二日の休み明け。
「はぁー…………」
彩は歯科の受付に座りながら大きく息を吐く。
隣では不服そうに杏菜がカルテを整理していた。
「…………あの、やめてもらえます?受付でため息吐くの。気分下がるんで」
杏菜の言葉に彩は「あ、ごめんね」と謝ると不機嫌な彼女の顔を見つめる。
翔から告白された後、どうやって部屋まで戻ったのか覚えていなかった。
次の日も、その次の日も翔は仕事で忙しくて会えず、あれから顔を合わせていない。
朝の送迎もいつもなら翔がしてくれていたが、忙しくて少しの間できないからと翔の用意してくれた車で仕事へ向かっていた。
隣で作業する杏菜を見つめ、気を紛らわすために彼女へ聞く。
「杏菜ちゃん、私のこと嫌い?」
「…………よくそういうこと本人に聞けますね?」
「んー、そうなんだけど。聞いた方が早いかなと思って」
彩は杏菜の横顔を見つめた。
彼女は眉間に皺を寄せ、無愛想にこちらを睨む。
「そうですね。……樹先輩のことも、神崎さんのことも。彩先輩ばかりモテてムカつきます。私の方が若くて可愛いはずなのに」
「あー……なんかコメントしずらいな……」
杏菜のあまりに直球の返答に彩は言葉に悩んだ。
まさに現状、その問題で頭を悩まし続けている彩にとって『モテる』という言葉はいいものばかりではない。
「樹先輩は私に見向きもしないし。神崎さんは問題外だし。」
杏菜は悔しそうに唇を強く結ぶ。
「……杏菜ちゃんは顔のいい人が好き?」
「当たり前です。」
「今までお付き合いしてきた人たちも?」
彩は気になって杏菜聞いた。
杏菜は「滅多にイケメンなんていません。普通の男です。」とぶっきらぼうに小さく答える。
「普通が一番だよ。」
「……バカにしてるんですか?」
彼女は不快そうにこちらを睨んだ。
確かに言い方を間違えたかもしれない、それでも彩は心の底からそう思っていた。
「してないよ。……顔がいいからって中身もいいとは限らないからね」
彩の言葉には重みがあった。
真剣に、本気で言っている彩の言葉に杏菜は睨むことをやめる。