『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
「はい?」

 次の瞬間、頭上の空間が大きく裂け、紫と金の光が渦を巻いた。

 その中心から、人が落ちてくる。

 しかも、よく知っている男だった。

「うおおおおおっ!?」

 酒瓶を抱えたまま、閻魔大王・螺良が空から降ってきた。

「親父ぃぃぃ!?」

「何で俺、落ちてんだぁぁぁ!」

 そのまま広場へ叩きつけられるかと思った瞬間、螺良は空中で身体を返し、何事もなかったように綺麗に着地した。

 そこだけ無駄に格好いい。

 片手には酒瓶、髪は少し乱れ、服も若干着崩れている。どう見ても、冥府が崩壊しかけている最中の最高責任者の姿ではなかった。

 咲良のこめかみがぴくりと動く。

「……螺良様、何処にいたんですか」

「いや、それはだな……」

 頭上から母さんの声が落ちてくる。

『酒蔵の裏にある隠し部屋よ』

 螺良の顔が固まった。

「沙羅麻!」

『何?』

「言わなくてもいいだろ!」

『軍釟が探してたんだから仕方ないでしょ』

 俺は親父を睨んだ。

「酒蔵の裏に隠し部屋?」

「まあ、ちょっとした休憩場所というか」

「咲良」

「初耳」

「増えてんじゃねぇか!」

 
< 16 / 54 >

この作品をシェア

pagetop