『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
俺は結界を維持したまま大きく息を吸い込み、天へ向かって声を張り上げた。

「お母様ぁぁぁぁぁ! 助けてくださーい! お父様がいませーん!」

 咲良がぎょっとしてこちらを見る。

「何こんな時に叫んでるのよ!」

「いいんだよ! こう言えば来るんだよ、たぶん!」

「誰が?」

「母さん! 母さんが聞けば親父も見つかる!」

 俺の母であり、天界全体を統括する女王・沙羅麻(さらま)は、冥府で大きな異変が起これば大抵把握している。

 ましてや息子がこれだけ大声で助けを求めれば、聞き逃すはずがない。

 予想通り、頭上の空間に淡い金色の光が広がり、聞き慣れた声がのんびりと降ってきた。

『軍釟〜、お母様よ〜』

「母さん!」

 隣で咲良が目を見開く。

「沙羅麻!?」

『は〜い。咲良もお疲れ様〜』

「今それどころじゃないのよ!」

 同級生で幼い頃からの付き合いだからこそ、咲良の返しにも遠慮がない。

 下では魂が雪崩のように押し寄せ、結界は今にも崩れそうだというのに、母さんの声はいつも通りだった。

「母さん、親父がいない! 何処行ったか分かる?」

『ちょっと待ってね』

 そう言ったかと思えば、ほんの数秒後には明るい声が返ってくる。

『見つけたわよ!』

「何処にいた!?」

『そんなことより――はい、転移』

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