『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』
 俺の両足首には、生まれた時から親父によって施された、魔力制御用のアンクレットがある。

 膨大すぎる魔力を抑えるためのもので、俺自身の力では勝手に解除できない。

 解除できるのは、この制御魔術を掛けた親父だけだ。

「片方だけだからな」

 俺が睨むと、螺良は笑う。

「分かってるって」

「本当に一個だけだからな!」

「しつこい」

「信用してねぇんだよ!」

 螺良がもう一度指を鳴らした。

 片足首のアンクレットが強い光に包まれ、銀色の装飾は砕けるのではなく、光へ溶けるように足首から消える。

 次の瞬間、それは俺の耳元へ移り、小さな装飾へと姿を変えた。

 同時に、身体の奥深くへ押し込められていた魔力が一気に解放される。

 短かった黒髪は銀色へと変わり、そのまま背中へ流れるほど長く伸びていった。抑え込まれていた神性まで表へ現れ、周囲の空気そのものが震え、それまで悲鳴を上げていた結界の光さえ一瞬だけ静まる。

「……くそっ」

 やっぱり嫌だ。

 この姿だけは、本当に嫌いだ。

 
< 19 / 54 >

この作品をシェア

pagetop