総長の、夜よりもあぶない溺愛。
その時、紗月の髪に夕方の風がふわっと触れた。
前髪が乱れて目にかかる。

蓮はごく自然にその髪を指でよけた。

「前見えてねぇだろ」

その仕草があまりにも自然で、幹部たちが一斉に固まる。

「……今のは完全に恋人」

相沢が小声で言う。

「総長、自覚ないのか」

神崎も苦笑する。

紗月は真っ赤になって動けない。
でも蓮は気にした様子もなく、紗月の手を引き直した。

「帰る」

「え、うん……」

「もう十分だろ。おまえら、解散」

白石が肩をすくめる。

「はいはい。これ以上は総長の機嫌が死ぬな」

桐生は最後に紗月を見て、静かに言った。

「また何かあったら、総長より先に俺らにも言って」

その直後、蓮の視線が刺さる。

桐生は少しだけ口元をゆるめた。
「怒るなよ。守るため」

神崎もやさしく続ける。

「黒瀬さんは、もう宵闇にとっても大事な人です」

そのひと言に、紗月は胸がいっぱいになる。

蓮は少し黙ったあと、ぶっきらぼうに言った。

「……行くぞ、紗月」

けれどつないだ手は、さっきより少しだけやさしかった。
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