その青は沈む
「お待たせ」
 玄関先で待っていた彼女に声を掛けて、外を見たら、少し雨が降っていた。傘は車に置いてきたし、タクシーを呼ぼうかと、また彼女に声を掛けた。

「ごめんね、そこに車あるんだけど、タクシーで行こうか」そう言って、携帯を取り出してから、検索をした。

「いえ……、翔太さんの車で、大丈夫です」彼女がそう言うから、「じゃあ、ここで待ってて、すぐ来るから」と言って、車まで駆けた。

 そして、車に乗ってから、エンジンをかけるときに、少しだけ考えた。

 声に元気もないし、なんだか思い詰めたようにも見える。僕に出来ることがあればいいけど、今のところ、話を聞くくらいしかない。

 彼女の近くに車を停めたら、少しして乗り込んできた。すぐに車を走らせて、彼女に気を向けた。

「寒くない? 暑かったら、すぐ言ってね。ひどくなりそうだね、雨」とか言ったりして、窓の外を見ていたら、ため息のようなものが聞こえた。

「あの……」彼女がそう言った時に、どこかで雷が落ちた。

 運転をしていた僕は、まともな返事もできなかった。その直後、雨が音を立てて、地面や車のボンネットを叩きだした。

「ごめん、ちょっと脇に停めるね」そう言った時には、目の先も見えないくらいになって、すぐに道路脇へ向かった。

 ひどい雨だと思いながら、自販機で買ったジュースを彼女に渡した。でも、僕からは何も言えなかった。

 しばらくそんな感じで、僕から話そうともしたし、彼女も缶を持ったまま、何か迷ってるような様子だった。

雨も止まなそうだし、近くのファミレスに避難しようかと、考えてたところだった。

「翔太さんて、彼女、いますか……」
 彼女にそう聞かれて、すぐ考えたけど、腑に落ちないまま、「いないよ」と言った。でも、彼女はまた黙った。

「どうして?」少し明るめに聞いてみる。

「あの……。男の人って……、好きな人と、一緒に、寝たりとか……その……」

 彼女の話を聞きながら、やっと分かった。けど、僕が答えられそうな話じゃない。気まずくなって、どこかで聞いたことを言った。

「忙しいとか、疲れてる、とかじゃないかな……多分」

 だって、そう言うしか他にないし、それにこれ以上聞くのは、僕にも限度がある。でも、彼女が悲しむのだけは嫌だ。

「佐伯も柚月ちゃんのことが好きだから、きっと大丈夫」

 自分で言ってるのに、台詞を読んでるみたいだった。
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