その青は沈む
 それから一週間が過ぎて、僕はとても迷っていた。

 彼女から相談されたことはいいし、僕が言ったことに後悔はない。けど、その後は絶対耳に入れたくない。いや、聞かなければいい話だ。澄ました顔して行けばいい。

 だいたい、僕にはアルバムを作るという目的がある。受付に彼女がいても、あの部屋であいつを見ても、普通にしてたらいいだけだ。何の問題もない。

 そんなことを考えてるうちに、二週間目を越えて、また悩んで、僕がスタジオに行ったのは、三週間目に入ったころだった。

 玄関先を抜けたら、彼女がいて、僕を見てからにこりと笑った。

「お疲れ様です、翔太さん」

「おつかれさま、柚月ちゃん」

 今日の彼女は前より輝いて見えた。いや、眩しすぎる。屋根でも壊れてるんじゃないかと、見上げたけど、ちゃんと天井があった。

 これが世にいう『幸せオーラ』というやつかもしれない。
でも、彼女がそうなら、それでいいし、顔を見て安心もできる。

 やっぱり日を置いてよかった、とか思って、彼女をよく見たら、難しい顔をして雑誌を見ていた。
 何を見てるのかなと覗いてみたら、ファッション雑誌の水着特集だった。

『おい待て』とすぐ思った。けど、そんなことは絶対言えない。ここはとにかく様子を見よう。

「翔太さん、どの水着が好きですか?」
 雑誌を見てる彼女の眼差しは、とても慎重に見えた。

「うーん……、どれがいいかなぁ……」とか言って、内心は『派手なのは選ぶな、普通のやつにしろ、絶対だ』と考えていた。

「これとかどうですかね……」そう言って、彼女が指したのは、ビキニだった。

「いや……それはちょっと……大胆かなぁ……」
 雑誌の中に並んだ女の子たちを見て、彼女をちらちら見ながら探した。

「佐伯さん、どんなの好きなんだろう……」

 彼女の目は恋をしてるような感じで、話す声はとても優しかった。あいつのことそんなに……。

 少し首を傾けて、すぐに戻した。あいつの場合、どれを選んでも、どうせ「寒いから、これ着ろ」とか言って、シャツかなんか掛ける。

 でも、彼女からしたら、そんなこと関係ないだろうし、ここは可愛らしいワンピースの水着にしておこう。

「翔太さん、どっちの水着がいいと思います?」
『きた』と思って、すぐに指した。けど、彼女はあまり気にしてないようだった。

 その代わりに、近くにいた彼が、ものすごい顔で見ている。
『いつの間にきたんだよ、忍者か』と思ってたら、彼女が言った。

「やっぱり、翔太さんが選んでくれたほうにしようかな……」

 あいつにドヤ顔してやったけど、舌打ちされた。聞こえてるのに、余裕のないやつだ。
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