その青は沈む
お昼前に、僕と彼は歌詞のことで、少し行き詰まった。そしたら、彼が「少し早いけど、昼飯食ってこい。柚月も一緒に頼む」と、僕に目も向けずに言った。
『当然だが?』と思ったけど、お腹も減ってるし、帰ってくるついでに何か買ってこようと考えていた。
そして個室を出たら、前のほうから背の高い女性が歩いてきた。スーツを着て、髪を一つに束ねた、モデルのような人だった。
女性は僕を通り過ぎて、個室へ入って行った。どうやら通い慣れてるようだ。持ってた鞄も厚そうだったし、取材か何かだろうと思った。
僕も仕事で何度か取材を受けたことがあるけど、その時に来るのは、ほとんどが女性で、柔らかい印象だった。けど、さっきの女性はなんだか厳しそうな感じだった。
そんなことを考えて、受付に行ったら、彼女が消えていた。一足遅かったみたいだ。仕方ないから、一人でファミレスにでも行こうかと思った。でも、食べる気分にならなくて、そっと個室へ戻った。
「悪い、そこに立ってくれ」彼は僕を少しだけ見て言った。さっきお昼に行けと言ったのに、戻ってきたら、彼はまた切り替わっていた。
やっぱり、どこかにスイッチがあるに違いない、と刑事を気取ってから、僕は彼の言う通りにソファーの横に立った。
そしたら、女性が僕をちらりと見て、すぐに彼のほうを見た。ほんの一瞬だったけど、とても冷たい目をしていた気がする。
多分、ここに僕が立たされたのには、理由があるはずだ。ドアは開いてるけど、万が一があったら、ここには監視カメラもないし、証拠になるものがない。女性が騒いだら、彼が何を言っても、誰も信じない。
彼が女性に何かをするとか、そういうことは絶対にないと言えるけど、それだけじゃ弱いのかもしれない。
僕は話してる二人にバレないように、そっと携帯を取り出した。いつでも録画できるように、歌詞を打ってるふりをして、会話を聞いていた。
「それでは、次の質問ですが、佐伯さんにとって音楽とは何ですか?」と女性は言った。
「……生活の一部ですね」少し柔らかい声で彼は応えた。
『いや、渋』とか思いながら、黙って様子を見る。
「素敵ですね。では、曲のことですが、かなり女性的な感じに聴こえるのですが、参考にしてる方とかいらっしゃるんですか?」
質問している女性を見て、何となく嫌な予感がしていた。
『当然だが?』と思ったけど、お腹も減ってるし、帰ってくるついでに何か買ってこようと考えていた。
そして個室を出たら、前のほうから背の高い女性が歩いてきた。スーツを着て、髪を一つに束ねた、モデルのような人だった。
女性は僕を通り過ぎて、個室へ入って行った。どうやら通い慣れてるようだ。持ってた鞄も厚そうだったし、取材か何かだろうと思った。
僕も仕事で何度か取材を受けたことがあるけど、その時に来るのは、ほとんどが女性で、柔らかい印象だった。けど、さっきの女性はなんだか厳しそうな感じだった。
そんなことを考えて、受付に行ったら、彼女が消えていた。一足遅かったみたいだ。仕方ないから、一人でファミレスにでも行こうかと思った。でも、食べる気分にならなくて、そっと個室へ戻った。
「悪い、そこに立ってくれ」彼は僕を少しだけ見て言った。さっきお昼に行けと言ったのに、戻ってきたら、彼はまた切り替わっていた。
やっぱり、どこかにスイッチがあるに違いない、と刑事を気取ってから、僕は彼の言う通りにソファーの横に立った。
そしたら、女性が僕をちらりと見て、すぐに彼のほうを見た。ほんの一瞬だったけど、とても冷たい目をしていた気がする。
多分、ここに僕が立たされたのには、理由があるはずだ。ドアは開いてるけど、万が一があったら、ここには監視カメラもないし、証拠になるものがない。女性が騒いだら、彼が何を言っても、誰も信じない。
彼が女性に何かをするとか、そういうことは絶対にないと言えるけど、それだけじゃ弱いのかもしれない。
僕は話してる二人にバレないように、そっと携帯を取り出した。いつでも録画できるように、歌詞を打ってるふりをして、会話を聞いていた。
「それでは、次の質問ですが、佐伯さんにとって音楽とは何ですか?」と女性は言った。
「……生活の一部ですね」少し柔らかい声で彼は応えた。
『いや、渋』とか思いながら、黙って様子を見る。
「素敵ですね。では、曲のことですが、かなり女性的な感じに聴こえるのですが、参考にしてる方とかいらっしゃるんですか?」
質問している女性を見て、何となく嫌な予感がしていた。