流れ星に願いをこめて。

第一話 再会の夜に、流れ星は願いを連れて

小学生のころ。
 付き合うなんて、よくわからなかった。

 好きってなに。
 一緒にいるって、どういうこと。
 そんなこと、ちゃんと知らなかったくせに、君と過ごす時間だけは、ずっと続くものだと信じていた。

 放課後の校庭。
 夕焼けに染まるブランコ。
 帰り道に並ぶ、ふたつの影。

 君が隣にいることは、あまりにも自然だった。
 だからきっと、なくなるなんて思ってもみなかった。

「ずーっと一緒に居れたらいいね」

 あの日、何気なくそう言ったわたしに、君は少しも迷わずに答えた。

「ずっと一緒だから」

 その言葉が、どうしてあんなにうれしかったのか。
 どうして何年経っても忘れられないのか。
 今なら少しだけわかる。

 あれが、はじめての恋だった。

 けれど、小学生の約束はあまりにも淡くて、簡単にほどけてしまった。

 卒業して、毎日が変わっていく。
 教室も、友達も、帰る時間も。
 少しずつ君と話すことは減って、気づいたときには、最後に交わした言葉さえ曖昧になっていた。

 自然消滅って、なんなんだろうね。

 けんかしたわけじゃない。
 嫌いになったわけでもない。
 さよならをした記憶すらないのに、いつのまにか離れてしまうことを、そう呼ぶのかな。

 忘れたくても、忘れられなかった。

 新しい生活はちゃんと楽しかったし、笑う日だってたくさんあった。
 それでもふとした瞬間に思い出すのは、いつだって君だった。

 夕焼けの色。
 夏の終わりのぬるい風。
 夜空を見上げたときの、胸の奥が少しだけ苦しくなる感じ。

 全部、君につながっていた。

 結局、忘れられないね。
 やっぱりまだ、大好きなんだと思う。

 *

 ——運命の再会なんて、ありえるのかな。

 そう思ったのは、高校二年の夏の終わりだった。

 塾帰りの夜道。
 昼の熱を少しだけ残した風が、さらりと髪を揺らしていく。
 見上げた夜空には、こぼれそうなくらい星が瞬いていた。

 運命なんて、毎日夜空に輝いている星みたいには、ずっと光っていないと思う。

 もっと儚くて。
 もっと一瞬で。
 そう、流れ星みたいに、気づいたときにはもう過ぎ去っているものなんじゃないかな。

 ねえ君は、どう思う?

「あれ……」

 不意に、後ろから声がした。

 そのたったひと言に、心臓が大きく跳ねる。
 聞き覚えのある声だった。
 でも、まさかと思う気持ちが、すぐには振り向かせてくれなかった。

「……やっぱり、紗月」

 低くて、落ち着いた声。
 昔より少しだけ大人びているのに、その響きだけでわかってしまう。

 ゆっくり振り返った先。
 街灯の明かりの下に立っていたのは、すらりと背が高くなった君だった。

 整った横顔。
 涼しげで近寄りがたいほど綺麗な目元。
 けれどその瞳には、昔と変わらないやさしさが静かに宿っている。

 一瞬、息の仕方を忘れた。

 こんなの、ずるい。
 忘れられるわけ、ないじゃない。
< 1 / 8 >

この作品をシェア

pagetop