戦闘狂の新妻
「リリーはどこに?」
ある日の昼前。オーガストは執務机に向かったまま、家令に尋ねた。
彼の妻はいつも領内を飛び回っていたし、オーガスト自身も練兵や領主としての仕事に追われているため、リリーがどこにいるのか把握できていないことがほとんどだった。
かろうじて午後は、彼女に与えた書斎で辺境伯夫人としての事務仕事をしていることが多い。だが、それもあくまでそういう日が多いというだけで、確実ではなかった。
「奥様は厨房へ向かわれたと聞いております」
「厨房?」
「先日植えたハーブが収穫できたため、料理人たちと保存食の相談をなさるそうです。上手くいけば、年単位で保存できる品ができるとか」
「……そうか」
オーガストは穏やかに微笑みながら、手元の書類へ署名した。
「僕の妻は、どうやらずいぶん有能らしい」
「そう思われるのでしたら」
家令は書類を受け取ると、じろりとオーガストを睨んだ。
「奥様に『君に妻としての役割を求める気はない』と仰ったことを撤回なさいませ」
「……リリーは気にしているだろうか」
「そういう問題ではありません」
家令はぴしゃりと言って、一通の封筒をオーガストに差し出した。
オーガストは一瞥して顔をしかめる。家令は無視して封を開け、中の招待状を広げた。
「王都のスミス公爵家からのパーティの誘いでございます」
「いかないと駄目なのか……忙しいのだが……」
「行かねばなりません。奥様を正式に旦那様の伴侶としてお披露目する、またとない機会でございます。そもそも奥様が嫁いでこられたのは王命でもあるのです。……我がペンバートンで実験を行うための」
「まあ、それも我らにとって益になることだ。構わんさ」
オーガストは鷹揚に笑った。
ある日の昼前。オーガストは執務机に向かったまま、家令に尋ねた。
彼の妻はいつも領内を飛び回っていたし、オーガスト自身も練兵や領主としての仕事に追われているため、リリーがどこにいるのか把握できていないことがほとんどだった。
かろうじて午後は、彼女に与えた書斎で辺境伯夫人としての事務仕事をしていることが多い。だが、それもあくまでそういう日が多いというだけで、確実ではなかった。
「奥様は厨房へ向かわれたと聞いております」
「厨房?」
「先日植えたハーブが収穫できたため、料理人たちと保存食の相談をなさるそうです。上手くいけば、年単位で保存できる品ができるとか」
「……そうか」
オーガストは穏やかに微笑みながら、手元の書類へ署名した。
「僕の妻は、どうやらずいぶん有能らしい」
「そう思われるのでしたら」
家令は書類を受け取ると、じろりとオーガストを睨んだ。
「奥様に『君に妻としての役割を求める気はない』と仰ったことを撤回なさいませ」
「……リリーは気にしているだろうか」
「そういう問題ではありません」
家令はぴしゃりと言って、一通の封筒をオーガストに差し出した。
オーガストは一瞥して顔をしかめる。家令は無視して封を開け、中の招待状を広げた。
「王都のスミス公爵家からのパーティの誘いでございます」
「いかないと駄目なのか……忙しいのだが……」
「行かねばなりません。奥様を正式に旦那様の伴侶としてお披露目する、またとない機会でございます。そもそも奥様が嫁いでこられたのは王命でもあるのです。……我がペンバートンで実験を行うための」
「まあ、それも我らにとって益になることだ。構わんさ」
オーガストは鷹揚に笑った。