『ひとりの少年』

「秋雨」






暫くしてから、僕は再び彼女に出逢った。




見かけただけですぐに分かってしまう。


我ながら女々しくて、しかも単純。




でも仕方がない、これが僕だから。僕の、恋だから。




その日もまた雨だった。

季節外れの台風が多かった年。
最近の天候に異常気象は付き物だろう。



秋に入る少し前の、いちばん世界が綺麗で、澄んでいる。そんな季節。



そんな季節に、僕は一方的に、彼女を見つけた。


彼女はまた、写真を撮っている。




雨を、撮っている。




雨の綺麗さは、よく分かる。
僕も雨が好きだから。




そんなことを考えながら、僕は高鳴る心臓を抑え込んで、彼女に近づいた。


「ぁ…あの、すみません……初め、まして。」


緊張しすぎて、言葉が紡げない。頭が真っ白だ。

彼女は言った。不思議そうにしながら。


「……? はい。」


凛とした、少し寒い声。一瞬で好きな声になる。


彼女は素っ気ない。無論当たり前だ。だけど、ちょっとだけ、傷つく。
僅かに期待していた自分もいる。恋とは盲目なものだから。


「ぁ、あの……えっと、雨……撮って、るんですか…?」


声が震えながらも、何とか絞り出した。
彼女は言った。


「はい。雨、好きで」


それを聞いて、「やっぱり、」と思った。やっぱり彼女は、雨が好きなんだ。



僕と同じ。



何故好きなんだろう。雨のどこが好きなんだろう。凄く興味を持った。


「なんで……好き、なんですか?」


そう聞くと、彼女は言った。



「雨の音を聴いていると、落ち着くからですかね」と。



ああ、やっぱり。この人だ。この人しか居ない。そう思った。



「そうなんですね」とだけ言って、その時は去った。
心臓が速すぎて、もう話せなかった。




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