『ひとりの少女』

「水溜まりに落ちた雫」




その日も確か、同じように、いつも通りの帰り道を歩いていた。



またその日も雨で、写真を撮って。
何となく気に入ったから、少し画角を変えてみたりして。



すると、声をかけられた。


「ぁ…あの、すみません……初め、まして。」


酷く驚いた。知りもしない人。恐らく男子高校生。
どうしたのだろう、道に迷ったりでもしたのだろうか。


「……? はい。」


いつも通りの声で、返事をする。すると彼は、


「ぁ、あの……えっと、雨……撮って、るんですか…?」と言った。


酷く緊張している様子だった。「ああ、見られていたのか」と思った。



でも、それだけ。



「はい。雨、好きで」

彼が、「なんで……好き、なんですか?」と言う。




なんで、なんでと来たか。




何かを好きな本当の理由なんて、何においてももう分からなくなっているのに。



「安心」で誤魔化す事にした。



きっと、今日一日だけの関係だろう。


「雨の音を聴いていると、落ち着くからですかね」


それだけ言うと、彼は「そうなんですね」とだけ言って、小走りに去っていた。



何がしたかったのだろう。いまいちよく分からない。



やっぱり、人と人とは全然違う。分かり合えることなど、一生無いだろう。





< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop