普通の関係ではありませんが、私達は仲良しです。
【番外編】
・旦那様に恋した奥様
「…はぁ、んっ。」
由貴子は伊吹の上に跨り、腰を振っている。
動きに合わせ乳房が揺れて、上を向く乳首は勃起していた。
乳首の色は濃くなり、乳首は大きくなった。
子供を二人産み、母乳で育てた。
二人目の元貴は、生後六ヶ月まで由貴子の元で育てられた。
六ヶ月を過ぎ、生家の白山家に養子に出して、現在は兄夫婦に育てられてる……。
生後六ヶ月までは、母親の母乳が必要だから、それまで待たれた。
六ヶ月の間に、我が子に愛着が湧き、手放すのは惜しくなったが、そうも言ってられなった。
……白山家の跡取りになる子。
我が身を引き裂かれる思いで、養子に出したのだった。
「あァッ…!」
下から突き上げられ、由貴子は絶頂に達した。
「…あッ、ん。またイッちゃうっ!」
イッたばかりなのに、また気持ち良いところを攻めて来る、伊吹に由貴子は翻弄されて、大いに乱れた。
「伊吹さんッ、」
縋るように何度も呼ばれて、伊吹も絶頂に達した。
懇願する必死さがあった。
・伊吹side
二十三歳の時、アメリカに留学していた。
深夜、日本にいる親友から、電話があった。
「……莉亜が死んだ。自殺したんだ。」
親友の櫂は、震える声でそう言った。
感情を必死に抑えて、堪えようとする、痛々しい声……。
親友の妹、莉亜はバレリーナで、天才美少女と、幼い頃から注目を浴び、テレビなどで特集を組まれた事もある、才能の溢れる女の子だった。
彼女がレッスン中に大きな怪我をしたのは、知っていたが、彼女がどんな気持ちで、何を考えてたのかは、知らなかった。
一番、早い便で日本に飛んだ。
喪服と数珠を買い、着替えてから会場に向かった。
「悪いな。わざわざ、遠いところから。」
最愛の妹を亡くし、櫂は頬が痩せ窶れていた。
「顔を見させてもらって良いか?最後に会ったのは、留学する前で約一年振りになる。」
「……見てやってくれ。あいつ、……伊吹の事、大好きだったからな……。」
会場には名門女子校の制服を着た、生徒がハンカチで口元を押さえ、泣いてる姿が多く見えた。
同級生、なのだろう。
莉亜よりも、悲劇のヒロイン気取りで泣く姿に、冷えた感情が生まれた。
彼女はもう、泣く事も笑う事も出来ない。
同級生の他には、バレエ関係者に見えた。
棺に向かうと、制服を着た女の子が、立っていた。
その子は泣いていなかった。
寧ろ、怒りを抱えてるような表情だった。
けれど、莉亜の頬に触れる仕草は、どこまでも優しかった。
女の子は反対の出口に向かって、足早に去って行った。
もう、用は済んだとばかりに。
「……今の子も、同級生?」
「一学年上の“由貴子先輩”。さっき、挨拶してくれたんだ。」
……あの子が、と思った。
莉亜から、自慢された。
絵の才能を持つ、将来は有名な画家の先生になる、“由貴子先輩”に描いてもらったんだと、絵を見せられた。
素人から見ても分かる、綺麗で美しい絵だった。
「フルネームは?」
「白山由貴子ちゃん。」
「白山って、……白山銀行のか?」
「だろうな。お前の家は、付き合いあるだろ?旧財閥系企業同士。」
「俺は次男。家の仕事とは、無関係。」
「本気で言ってるのか?長男を差し置いて、次期社長になるんじゃないかって、もっぱらの評判だぞ?」
「どこ情報だ?俺が日本にいない間に、面倒な事になってるな……。」
「優秀過ぎるのも、考えものだな。」
「……。」
面倒な事は置いといて、莉亜の顔を見た。
穏やかな顔で眠っていて今にも、“伊吹くん!”と、起きて明るい声が聞こえそうだった。
お焼香をして、手を合わせた。
もう、苦しまなくて良い。
楽になれたか?
櫂の事や、家族の事は気にするな。
後は生きてる人間が、どうにかする。
心安らかに体を休めてくれ。
バレリーナとして、精神も肉体も酷使して来た。
綺麗で美しいだけではない世界で、小さな女の子は戦って来た。
十分過ぎる程、頑張った。他人が彼女の短い生涯を嘆いて、どうこう言うのはお門違いだ。
二年間の留学を終え、日本に帰国した。
鳳不動産に就職するよう、現社長で家長の父から命令が下った。
抵抗するのは得策ではなかった。
他に就職したところで、妨害行為を受ける可能性が大いにあった。
周囲に迷惑を掛けるのは、憚られた。
鳳不動産で働き始めて、約半年が経った頃、お見合いの話が来た。
相手は白山銀行を興した、創業者一族のご令嬢。
……白山由貴子さん。
自分より五歳年下の二十歳になったばかりの女の子だった。
莉亜の一学年上の先輩、“由貴子先輩”であった。
お見合いの席は料亭の個室。
午前中に仕事をして、午後から休みを取ったが、仕事が予定より長引き、渋滞にも捕まった。
遅れて到着した。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。」
由貴子さんは、紺色の振袖姿で待っていた。
怒ってる様子はなく、きょとんとした表情で、俺を見つめた。
……怒って帰ってなくて良かった。
お見合いに遅刻とは、印象が悪い……。
挽回出来るかと、並べられて行く料理を見ながら、思った。
「……このお見合い、……結婚について如何お考えですか?」
由貴子さんは、あまり箸が進んでおらず、お口に合わなかったのか、箸を早々に置いた。
「由貴子さんは大学で絵の勉強をされていて、画家として生計を立てて行きたいとお考え、なのですよね?」
誠実にお答えする為に、俺も箸を置いた。
「……はい。」
日本で最難関の名門美大に、由貴子さんは在学中で油絵を専攻していると、お話を伺った。
「僕個人の考えですが、結婚後も好きな事をして構いません。家に閉じ籠ったりせず、自由に過ごして頂いて結構です。」
「……画家として仕事をしても、構わない、と仰るんですか……?」
「えぇ。」
絵の才能を持ち、莉亜ちゃんが語った、将来は有名な画家の先生になる、そんな未来が、近くまで来ていた。
莉亜ちゃんが生きていたら、きっと、とても喜び、“由貴子先輩”を自慢しただろう。
自分の目は間違ってなかった。
凄い先生に絵を描いてもらったんだ、とも言いそうだ。
「結婚するまでに、デートを重ねませんか?」
由貴子さんがお庭を見たいと、二人で庭に出て鯉が泳ぐ池まで来た。
「良いですね。デート。」
月に一度、デートする事に。
行き先は任されたので、自然豊かな公園に誘った。
由貴子さんから、手を繋いでくれた。
体温が低く、冷たい手だった。
公園ではスワンボートに乗り、レストランのテラス席で休憩した。
由貴子さんはハンバーガーを、美味しそうに食べていた。
料亭の堅苦しい食事より、リラックスした様子で、楽しまれていた。
二度目のデートは、お肉が食べたいと要望があったので、鉄板焼きのお店にお連れした。
とっても美味しいと、満足して頂けて良かった。
三度目のデートは、美術館だった。
目を輝かせて、熱心に作品を見ていた。
俺は美術には疎いが、そんな様子の由貴子さんを見てるのは、飽きなかった。
表情豊かで、自分とは違った。
絵を描く芸術家だからなのか、感性が高く美しさを探求する、好奇心旺盛な感じがした。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです。」
そう言われ、こちらこそと返そうとしたが、言葉は出なかった。
由貴子さんが運転席に座る俺の方に身を乗り出し、俺の頬にキスをした。
……柔らかい唇の感触がした。
車で由貴子さんが住む、桔梗荘の前まで送り届けた。
由貴子さんは何事もなかったかのように、車を降りて行った。
放心状態のまま、車を走らせたのだった。
中学、高校、大学時代には、日本人の方とお付き合いした。
アメリカに留学中は、イタリア人とスペイン人の方とお付き合いした。
年上の方としか、お付き合いがなかった。
大人に囲まれて育ち、年下と接した機会が少ない。
兄弟は歳の離れた兄が、一人いるだけ。
年下の女の子と接したのは、親友の妹の莉亜ちゃん、くらいだった。
大学生の由貴子さんは五歳も年下で、自分はおじさんなのでは……。
二十五歳で二十代半ばでは、あるが。
大学生の女の子からしたら、社会人は間違いなくおじさんだろう。
「お前のお見合い相手は、若くお美しいと評判のお嬢さんだ。」
「……。」
「彼方のお家も後継者に恵まれてないようでな、そのお嬢さんに、彼方の家の後継者も産んでもらうそうだ。」
「……。」
「二人は孕ませてやりなさい。」
「……。」
「一人目の嫁は失敗だった。もう年寄りだ、子供は望めまい。種が良くとも畑が悪ければ、意味がないからな。」
兄夫婦は結婚生活を続けてはいるが、別居状態だった。
子供が出来ないからと、離婚するのは外聞が悪いと、それだけの理由で。
世間体を気にして、いた。
兄と義姉も、お見合い結婚。
義姉は兄より年上で、良家のお嬢様だった。
俺は義姉に可愛がってもらったが、兄には昔から、嫌われてる自覚があった。
長男で嫡男の兄より、出来が良かったから。
兄が過去に残した成績を、あっさりと抜いた。
勉強も水泳も。
英・数の二科目で全国模試一位になった。
水泳は全国大会で優勝経験がある。
自由形と個人メドレーで。
兄には俺を見下すな、馬鹿にするなと、殴られた事があった。
兄がそう感じたなら、見下して馬鹿にしていたのかも知れない。
弟より劣っている兄が、恥ずかしかった。
自分の子供を種馬としか、思ってない父親の元で育った。
自分が父親になり子供を持つ、イメージが湧かない。
……子供は苦手。
良い父親になれるとは、到底思えなかった。