冷徹若頭の溺愛指令 ─極道の娘とボディガード─
第一章:漆黒の影と気高い拒絶
東京の空は、
昼間のアスファルトの熱をたっぷりと含んだねっとりとした夜気に包まれていた。
夏特有の湿った風が、
ネオンに彩られた街を駆け抜ける。
都内のおしゃれな商業ビルが立ち並ぶ一角。
その片隅で、女性下着アパレルショップ『Lumière Intime(リュミエール アンティーム)』のシャッターが静かに下ろされた。
「ふう……今日も疲れたぁ!」
明るいブラウンカラーのパーマがかったロングヘアーを揺らしながら、
一条由梨香(24)は小さく伸びをした。
華奢でしなやかなボディラインを包む上品なオフィスカジュアル、
そして身長165cmのバランスの良さは、
制服を脱いだ私服姿でもひときわ目を引く。
(今日も店長が売り上げのことで細かいし……。あ、そうだ、
このあと龍平と待ち合わせしてるんだっけ)
スマホの画面を覗き込み、
大好きな彼氏である笹川龍平からの連絡を確認しようとした、
その時だった。

「――お迎えに上がりました、お嬢様」
背後から掛けられた低く、
よく通る声に、
由梨香はびくりと肩を跳ねさせた。
「っ、びっくりしたぁ……!
って、響さん!?」
振り返った由梨香の視線の先には、
完璧な黒スーツを着こなした長身の男が立っていた。
黒縁眼鏡の奥にある漆黒の瞳は、
夜の闇よりも冷徹に、
しかしどこか熱を帯びた光で由梨香を見下ろしている。
――氷室響(28)。
父・宗一郎が経営する建設会社『ノクターン・エステート』での物静かな秘書の顔とは違い、
今の彼は圧倒的な威圧感を纏った「黒曜会若頭」の顔そのものだった。
「なによ、こんなところで待ち伏せして。
仕事終わりなんだからほっといてよ」
「お父様からのご命令です。
今すぐご実家へ戻って頂きます」
「はぁ!?
やだ、急に何言ってるの。
私、このあと友達……じゃなくて、予定があるの!
龍平と会う約束が――」
「その男との約束はキャンセルしてください」
容赦なく遮った響の一言に、
由梨香の気が強い性格が一気に頭をもたげた。
「ちょっと!人の予定を勝手に決めないでよ! ていうか、急に何!?
ストーカーみたいで気持ち悪いんですけど!」
「お嬢様になんと仰られようと、
今日ばかりは引き下がりません」
一歩、
また一歩と詰め寄る響の身長は188cm。
小柄な由梨香から見れば、
それは巨大な壁のように迫ってくる。
無言で腕を掴まれ、
強引に黒塗りの高級セダンの後部座席へと押し込まれそうになり、
由梨香は激しく抵抗した。
「やめてってば!
離してよ、響さんっ……!」
「大人しくして下さい、お嬢様」

抵抗する由梨香の柔らかい体躯を、
響は怪力で、
しかし決して傷つけない絶妙な力加減で抱え込む。
その至近距離から漂う大人の男の香りと、
隠しきれない熱気に、
由梨香はわずかに息を呑んだ。
(なんなの……この人、
いつもは敬語で穏やかで冷静なのに、
今日はおかしい……っ)
抵抗もむなしく、
由梨香は無理やり後部座席に押し込まれ、
ドアが重い音を立てて閉ざされた。
運転席に滑り込んだ響が、
バックミラー越しに由梨香を一瞥する。
その瞳に宿るただならぬ決意に、由梨香は大きな溜息をついたのであった。
昼間のアスファルトの熱をたっぷりと含んだねっとりとした夜気に包まれていた。
夏特有の湿った風が、
ネオンに彩られた街を駆け抜ける。
都内のおしゃれな商業ビルが立ち並ぶ一角。
その片隅で、女性下着アパレルショップ『Lumière Intime(リュミエール アンティーム)』のシャッターが静かに下ろされた。
「ふう……今日も疲れたぁ!」
明るいブラウンカラーのパーマがかったロングヘアーを揺らしながら、
一条由梨香(24)は小さく伸びをした。
華奢でしなやかなボディラインを包む上品なオフィスカジュアル、
そして身長165cmのバランスの良さは、
制服を脱いだ私服姿でもひときわ目を引く。
(今日も店長が売り上げのことで細かいし……。あ、そうだ、
このあと龍平と待ち合わせしてるんだっけ)
スマホの画面を覗き込み、
大好きな彼氏である笹川龍平からの連絡を確認しようとした、
その時だった。

「――お迎えに上がりました、お嬢様」
背後から掛けられた低く、
よく通る声に、
由梨香はびくりと肩を跳ねさせた。
「っ、びっくりしたぁ……!
って、響さん!?」
振り返った由梨香の視線の先には、
完璧な黒スーツを着こなした長身の男が立っていた。
黒縁眼鏡の奥にある漆黒の瞳は、
夜の闇よりも冷徹に、
しかしどこか熱を帯びた光で由梨香を見下ろしている。
――氷室響(28)。
父・宗一郎が経営する建設会社『ノクターン・エステート』での物静かな秘書の顔とは違い、
今の彼は圧倒的な威圧感を纏った「黒曜会若頭」の顔そのものだった。
「なによ、こんなところで待ち伏せして。
仕事終わりなんだからほっといてよ」
「お父様からのご命令です。
今すぐご実家へ戻って頂きます」
「はぁ!?
やだ、急に何言ってるの。
私、このあと友達……じゃなくて、予定があるの!
龍平と会う約束が――」
「その男との約束はキャンセルしてください」
容赦なく遮った響の一言に、
由梨香の気が強い性格が一気に頭をもたげた。
「ちょっと!人の予定を勝手に決めないでよ! ていうか、急に何!?
ストーカーみたいで気持ち悪いんですけど!」
「お嬢様になんと仰られようと、
今日ばかりは引き下がりません」
一歩、
また一歩と詰め寄る響の身長は188cm。
小柄な由梨香から見れば、
それは巨大な壁のように迫ってくる。
無言で腕を掴まれ、
強引に黒塗りの高級セダンの後部座席へと押し込まれそうになり、
由梨香は激しく抵抗した。
「やめてってば!
離してよ、響さんっ……!」
「大人しくして下さい、お嬢様」

抵抗する由梨香の柔らかい体躯を、
響は怪力で、
しかし決して傷つけない絶妙な力加減で抱え込む。
その至近距離から漂う大人の男の香りと、
隠しきれない熱気に、
由梨香はわずかに息を呑んだ。
(なんなの……この人、
いつもは敬語で穏やかで冷静なのに、
今日はおかしい……っ)
抵抗もむなしく、
由梨香は無理やり後部座席に押し込まれ、
ドアが重い音を立てて閉ざされた。
運転席に滑り込んだ響が、
バックミラー越しに由梨香を一瞥する。
その瞳に宿るただならぬ決意に、由梨香は大きな溜息をついたのであった。