銀杏並木の毒舌な隣人③ (年下の彼氏編)
ふとっ、――すぐ隣のベンチに、ぽつんと取り残されたピンク色のクマのぬいぐるみが目に入った。
誰かに忘れられてしまったのか、その小さな背中は、まるで今の麻美子のように寂しげに丸まっていた。
麻美子は、周りを気にすることなく、平然とクマのぬいぐるみに話しかけていた。
「どうしたのあなた。あなたのご主人は、どこにいるの」
そんな麻美子に、ぬいぐるみも自然に、顔を向けると、幼い、けれど真っ直ぐな声で語りかけてきた。
『僕のご主人は、あそこ。あそこでお母さんに、ソフトクリームを買ってもらっているところだよ』
その子の手を指す方へ、視線を向けると、母親に連れられた幼い少女が、言葉の通り、ソフトクリームを買ってもらっている最中だった。
『ここで待ってて、座らせてくれたんだ』
麻美子はその言葉を聞き、少しホッとしたように頬をやわらげた。
「よかった。きっとクリームで汚れないように、座らせてくれたんだね」
クマのぬいぐるみは、大きく「うん」と頷くと、ポンと、背中をベンチの背もたれにつけた。
『あの子はね、いつも僕のことを、「ぎゅっ」と抱きしめてくれるんだ。ねえ、おねいちゃんも、誰かにぎゅっと抱きしめられたら、嬉しいでしょ?』
「……え?」
『あの子は、お母さんに怒られると、大泣きしながら僕に顔を埋めるんだ、嬉しいことがると、力いっぱいに僕を抱きしめるんだっ。いつも側にいて、僕を大事にしてくれる。かっこ悪いところも、泣き顔も、泥んこの手も、全部僕に預けてくれる』
その純粋すぎる言葉の礫に、麻美子の胸の奥の頑丈な鍵が、音を立てて外れた。
「……っ」
誰かに忘れられてしまったのか、その小さな背中は、まるで今の麻美子のように寂しげに丸まっていた。
麻美子は、周りを気にすることなく、平然とクマのぬいぐるみに話しかけていた。
「どうしたのあなた。あなたのご主人は、どこにいるの」
そんな麻美子に、ぬいぐるみも自然に、顔を向けると、幼い、けれど真っ直ぐな声で語りかけてきた。
『僕のご主人は、あそこ。あそこでお母さんに、ソフトクリームを買ってもらっているところだよ』
その子の手を指す方へ、視線を向けると、母親に連れられた幼い少女が、言葉の通り、ソフトクリームを買ってもらっている最中だった。
『ここで待ってて、座らせてくれたんだ』
麻美子はその言葉を聞き、少しホッとしたように頬をやわらげた。
「よかった。きっとクリームで汚れないように、座らせてくれたんだね」
クマのぬいぐるみは、大きく「うん」と頷くと、ポンと、背中をベンチの背もたれにつけた。
『あの子はね、いつも僕のことを、「ぎゅっ」と抱きしめてくれるんだ。ねえ、おねいちゃんも、誰かにぎゅっと抱きしめられたら、嬉しいでしょ?』
「……え?」
『あの子は、お母さんに怒られると、大泣きしながら僕に顔を埋めるんだ、嬉しいことがると、力いっぱいに僕を抱きしめるんだっ。いつも側にいて、僕を大事にしてくれる。かっこ悪いところも、泣き顔も、泥んこの手も、全部僕に預けてくれる』
その純粋すぎる言葉の礫に、麻美子の胸の奥の頑丈な鍵が、音を立てて外れた。
「……っ」