落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
でも、何かを考えるより先に、後ろから明るい声が飛んできた。

「はいはいはいはい!」

 衣装担当の桃園えるちゃんが、きらきらした目で手を挙げる。

「今の、完全に嫉妬じゃない?」

「は?」

 言ったのは、小春と蓮がほぼ同時だった。

「え、違うの?」

「違う」

「違うよね?」

 小春が確認するように見ると、蓮は一瞬だけ言葉を詰まらせた。

「それは……」

「ほら! 詰まった!」

「桃園」

「きゃー、こわい!」

 えるちゃんは楽しそうに笑いながら、小春の腕にぎゅっと抱きつく。

「小春ちゃん、気をつけてね。蓮くん、独占欲強そう」

「ど、独占欲!?」

「違う!」

 今度こそはっきり否定した蓮だったけれど、耳が少し赤い。
 それを見つけた瞬間、クラス中がざわついた。

「え、今赤くなった?」

「桜井が?」

「まじで?」

 蓮はこめかみを押さえて、深いため息をつく。

「……いいから特訓を続けるぞ」

「ふふ」

「白雪、おまえも笑うな」

「でも」

「笑うな」

「だって、蓮くん」

「なんだ」

「ちょっとだけ、可愛い」

 しまった、と思ったときには遅かった。

 蓮の動きが止まる。
 教室の空気も止まる。

 次の瞬間、誰かの吹き出す声が響いて、そこから一気に笑いが広がった。
< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop