普通の貴族だと思って結婚したら、身分を隠して潜伏する王太子様でしたー!? ……離婚します!
 アルベルトは心配してくれて、優しく聞いた。私は小さくため息をついて、彼の質問に頷いた。

「ええ。大丈夫ですわ。まさか、こんな人の多い場所であんなことをするなんて……信じられませんわ」

「そう? それより、チョコレートでも食べなよ。気分が良くなるから」

 微笑んだアルベルトの手には、甘いチョコレート。目を瞬いた私はチョコを唇に押し当てられて、もぐもぐと食べた。包み紙はアルベルトの手の中でくしゃりと音を立てて、彼はポケットにそれをしまった。

 おそらくは、先ほどポケットの中から取り出したのだろうな……そう思った。

「美味しい?」

「……はい」

 私はアルベルトにそう聞かれ、呆気に取られたけれど悪い気はしなかった。

 公衆の面前であんなことをされると思っていなくて、ただ話を聞いて欲しいだけだった。同情してくれないかと望んでいた訳ではないけれど、内心ではそうしてくれるかなと思った。

 もうこの話はこれで終わってしまった。嫌な気持ちも終わった。アルベルトが続かせなかった。話を聞いて欲しかったと思ったけれど、私はいまはその方が良かった。

< 7 / 18 >

この作品をシェア

pagetop