魔法より、君に恋をする。

第四章 知らないはずの魔法

翌日の放課後、リリアは昨日と同じ生徒会室の前に立っていた。

 今回は迷わなかった。

 正確には、一度だけ中央階段を通り過ぎたものの、自力で間違いに気づいて引き返したので、本人としては迷っていない判定である。

「失礼します」

「いらっしゃい。今日は一人で来られたんだね」

 扉を開けるなり言われ、リリアは眉を寄せた。

「どうして毎回、私が迷う前提なんですか?」

「昨日、女子寮と男子寮を間違えかけた人に言われてもね」

「あれはちょっと考え事してただけです」

「そういうことにしておこうか」

「その言い方嫌いです」

「知ってる」

 昨日とまったく同じ返事だった。

 リリアが睨むと、机で書類を整理していたルシアンが小さく笑う。

「冗談だよ。ちゃんと覚えていたんだね」

「先輩が変なこと言うからです」

「僕のせい?」

「かなり」

 今日は生徒会長を示す上着を脱いでいるらしく、ルシアンは白いシャツに深紅のタイという簡素な姿だった。それだけで普段より少し年相応に見える。

 リリアは昨日渡された銀色の札を取り出した。

「これ、持ってきました」

「なくさなかった?」

「子供じゃないです」

「方向音痴と物をなくすことは別か」

「当たり前です」

「それは失礼」

 ルシアンは立ち上がると、机の上から鍵束を取った。

「では行こうか」

「はい」

「今日はちゃんと僕についてきて」

「昨日もちゃんとついていきました」

「男子寮へ向かおうとしていたけどね」

「それはもう忘れてください」

「善処するよ」

 たぶん忘れる気はない。

 リリアはそう判断した。
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