魔法より、君に恋をする。
 試合は中断となった。

 正式には、演習設備の異常による無効試合。

 第二部隊にも事情が説明され、初戦は翌日に再設定されることになった。

 観覧席から戻る途中。

 リリアは一度だけ振り返った。

 黒い術式は、もう消えている。

 十三本目の線も。

 何も残っていない。

 それでも。

 声だけは耳に残っていた。

『お前じゃない』

 自分ではない。

 なら。

 誰を探しているのだろう。

 誰を。

 返せと言っているのだろう。

「リリア」

 隣から呼ばれる。

 セシル。

「行こう」

「うん」

 前にはノア。

 少し先にアレンとカイル。

 レオンハルトはルシアンと何か話している。

 六人。

 全員いる。

 リリアはそれを確かめた。

 そして歩き出す。

 今はまだ。

 それでいい。
< 173 / 284 >

この作品をシェア

pagetop