魔法より、君に恋をする。
第三十章 選ぶのは、私
春季実戦祭二日目。
第十三部隊は、朝から喧嘩をしていた。
「だから俺が前だっつってんだろ!」
「昨日も前だっただろ」
「だから何だよ!」
「今日は俺が行く」
「クロフォード先輩が前だと固すぎる」
「何が悪い」
「攻める気ある?」
「お前よりは考えている」
「喧嘩売ってんのか!」
「事実だ」
「買った!」
「売ってない」
「二人とも朝から元気だねえ」
ノアが笑いながらパンを食べている。
食堂。
第十三部隊の朝食。
実戦祭二日目の競技形式が発表されたのは、ほんの五分前だった。
今日の形式は、拠点争奪戦。
演習区画内に設置された五つの魔力塔を奪い合い、制限時間終了時により多く確保していた部隊が勝利する。
昨日の救出戦とは違い、攻撃も防御も必要になる。
「私は中央がいい」
リリアが言った。
全員が止まった。
「何?」
「いや」
レオンハルトが苦笑する。
「自分から中央って言うとは思わなかった」
「昨日楽しかった」
「中央が?」
「みんな見える」
リリアは卓上の簡易地図を指す。
「中央の塔取ったら、全部届きそう」
「……」
ノアが地図を見る。
「届く?」
「たぶん」
「この距離だよ?」
「届く」
「言い直した」
「いける」
セシルが少し考える。
「いいかもしれない」
「アルヴェイン?」
「リリアを中央に置けば、どこかが崩れても援護できる。昨日みたいに固定するんじゃなくて、中央を拠点にして自由に動いてもらうの」
「でも中央は狙われるよ」
レオンハルトが言う。
「だから私が残る」
セシルが答えた。
「セシルも?」
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ決まり」
「早いなあ」
ノアが頬杖をつく。
「僕も中央がいい」
「駄目」
「即答?」
「ノアは動けるから外」
「セシルも動けるじゃん」
「私は近接だから中央防衛に向いてる」
「僕だって――」
「ノア」
リリアが呼ぶ。
「何?」
「右取ってきて」
「……」
「駄目?」
ノアは数秒黙った。
「その頼み方ずるくない?」
「普通」
「本人だけ分かってないの怖いなあ」
それでも笑う。
「分かった。取ってくる」
「ありがとう」
カイルが地図へ指を置いた。
「なら俺は北だ」
「じゃあ俺南」
アレンが言う。
「レオン先輩は?」
「最初はノアと東へ行く。そのあと中央へ戻って全体を見る」
「うん」
リリアは満足そうに頷いた。
「完璧」
「まだ始まってないよ」
レオンハルトが笑う。
少し離れた場所で。
ルシアンは、その光景を静かに見ていた。
「ルシアン先輩?」
呼ばれて顔を上げる。
「何?」
「聞いてた?」
「もちろん」
「嘘」
「どうして?」
「今ぼーっとしてた」
「……よく見てるね」
「最近見るようになった」
昨日も聞いた言葉。
ルシアンは少しだけ笑う。
「いい作戦だと思うよ」
「本当?」
「中央のリリアとセシルをどう崩されないようにするかが鍵だけど」
「崩れません」
セシルが答える。
「頼もしいね」
「任せてください」
「じゃあ」
ルシアンは六人を見る。
「今日も全員で帰っておいで」
「うん」
リリアが即答する。
昨日より。
その言葉はずっと自然だった。
第十三部隊は、朝から喧嘩をしていた。
「だから俺が前だっつってんだろ!」
「昨日も前だっただろ」
「だから何だよ!」
「今日は俺が行く」
「クロフォード先輩が前だと固すぎる」
「何が悪い」
「攻める気ある?」
「お前よりは考えている」
「喧嘩売ってんのか!」
「事実だ」
「買った!」
「売ってない」
「二人とも朝から元気だねえ」
ノアが笑いながらパンを食べている。
食堂。
第十三部隊の朝食。
実戦祭二日目の競技形式が発表されたのは、ほんの五分前だった。
今日の形式は、拠点争奪戦。
演習区画内に設置された五つの魔力塔を奪い合い、制限時間終了時により多く確保していた部隊が勝利する。
昨日の救出戦とは違い、攻撃も防御も必要になる。
「私は中央がいい」
リリアが言った。
全員が止まった。
「何?」
「いや」
レオンハルトが苦笑する。
「自分から中央って言うとは思わなかった」
「昨日楽しかった」
「中央が?」
「みんな見える」
リリアは卓上の簡易地図を指す。
「中央の塔取ったら、全部届きそう」
「……」
ノアが地図を見る。
「届く?」
「たぶん」
「この距離だよ?」
「届く」
「言い直した」
「いける」
セシルが少し考える。
「いいかもしれない」
「アルヴェイン?」
「リリアを中央に置けば、どこかが崩れても援護できる。昨日みたいに固定するんじゃなくて、中央を拠点にして自由に動いてもらうの」
「でも中央は狙われるよ」
レオンハルトが言う。
「だから私が残る」
セシルが答えた。
「セシルも?」
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ決まり」
「早いなあ」
ノアが頬杖をつく。
「僕も中央がいい」
「駄目」
「即答?」
「ノアは動けるから外」
「セシルも動けるじゃん」
「私は近接だから中央防衛に向いてる」
「僕だって――」
「ノア」
リリアが呼ぶ。
「何?」
「右取ってきて」
「……」
「駄目?」
ノアは数秒黙った。
「その頼み方ずるくない?」
「普通」
「本人だけ分かってないの怖いなあ」
それでも笑う。
「分かった。取ってくる」
「ありがとう」
カイルが地図へ指を置いた。
「なら俺は北だ」
「じゃあ俺南」
アレンが言う。
「レオン先輩は?」
「最初はノアと東へ行く。そのあと中央へ戻って全体を見る」
「うん」
リリアは満足そうに頷いた。
「完璧」
「まだ始まってないよ」
レオンハルトが笑う。
少し離れた場所で。
ルシアンは、その光景を静かに見ていた。
「ルシアン先輩?」
呼ばれて顔を上げる。
「何?」
「聞いてた?」
「もちろん」
「嘘」
「どうして?」
「今ぼーっとしてた」
「……よく見てるね」
「最近見るようになった」
昨日も聞いた言葉。
ルシアンは少しだけ笑う。
「いい作戦だと思うよ」
「本当?」
「中央のリリアとセシルをどう崩されないようにするかが鍵だけど」
「崩れません」
セシルが答える。
「頼もしいね」
「任せてください」
「じゃあ」
ルシアンは六人を見る。
「今日も全員で帰っておいで」
「うん」
リリアが即答する。
昨日より。
その言葉はずっと自然だった。