魔法より、君に恋をする。
 寮へ向かう途中、二人は購買前の小さな休憩所へ寄った。

 セシルが練習後で空腹だと言ったからだ。

「何食べる?」

「何でも」

「それ一番困るやつ」

「じゃあセシルと同じ」

「分かった」

 セシルは二つのパンと飲み物を買って戻ってきた。

「はい」

「ありがとう。払う」

「いいよ」

「駄目」

「これくらい」

「ノアにもこの前方位針もらったし、みんなに買ってもらってばっかりになる」

 セシルの動きが止まった。

「……ノアから?」

「うん」

「その方位針?」

「そう」

「へえ」

 少しだけ声が低くなった。

「どうしたの?」

「別に」

「セシルも欲しい?」

「なんでそうなるの」

「同じの買う?」

「いらないよ」

 セシルはパンを一口食べる。

「……プレゼントか」

「うん」

「嬉しかった?」

「嬉しかったよ」

「そっか」

 リリアはセシルを見る。

「セシル、機嫌悪くなった?」

「なってない」

「なった」

「なってないよ」

「分かるようになってきた」

 セシルが黙る。

「セシルのこと、もっと知りたいって言ったから」

「……それとこれ、関係ある?」

「ある。前より分かる」

 セシルはしばらくリリアを見つめた。

「じゃあ、今何考えてるかも分かる?」

「うん」

「本当に?」

「パン美味しい」

「全然分かってない」

「違う?」

「違う」

「じゃあ何?」

「言わない」

「知りたい」

 セシルの動きが止まった。

「……リリア」

「何?」

「それ、ずるい」

「ルシアン先輩にも言われたことある」

「会長と一緒にしないで」

「なんで?」

「なんでも」

「何でもないじゃなくて?」

「……」

 セシルが笑った。

「本当に少しずつ学習してるね」

「でしょ?」

「変なところばっかり」
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