魔法より、君に恋をする。

第十五章 あなたの隣で

 リリアは最近、一つのことに気づいた。

 学院には、自分の知らない道が多すぎる。

 これは迷子という意味ではない。

 断じて違う。

 単純に、建物が広すぎるのだ。

「……ここ、どこ?」

 ただし今日は、少しだけ迷っていた。

 放課後。

 特別資料室へ向かう途中だった。

 ルシアンと約束した通り、黒い石について調べるためである。

 昨日のうちに「明日の放課後、生徒会室へ」と言われていた。

 そこまでは覚えている。

 問題は、生徒会室へ行くつもりで歩いていたはずなのに、なぜか第三学年棟へ入ってしまったことだった。

「方位針……」

 鞄から銀色の道具を出す。

 そして、すぐ戻した。

 学院内ではあまり役に立たないことを、ようやく学習した。

「偉い」

 自分を褒める。

「何がだ」

 後ろから声がした。

 振り返る。

 黒髪の男子生徒が立っていた。

「クロフォード先輩」

「何をしている」

「生徒会室へ行こうとしてます」

「ここは三年棟だ」

「知ってます」

「今知った顔だな」

「違います」

「そうか」

 絶対に信じていない。

「先輩は?」

「教室から戻るところだ」

「ちょうど良かった」

「何が」

「生徒会室まで連れていってください」

「……堂々としているな」

「迷ってないので」

「迷ってるだろ」

「少し道を間違えただけです」

「それを迷ったと言う」

 カイルは小さく息を吐いた。

「来い」

「はい」

 歩き出す。

 リリアはその隣へ並んだ。

 以前なら、カイルは一歩前を歩いていた気がする。

 けれど今日は隣だった。

 その違いに気づいた自分が、少し不思議だった。
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