魔法より、君に恋をする。
生徒会室へ着く。

 しかし、ルシアンはいなかった。

 机の上に一枚の紙が置かれている。

『急用が入った。三十分ほどで戻る。勝手に地下へ行かないように。特にリリア。』

「名指し」

「信用されていないな」

「失礼」

「実績だろう」

「クロフォード先輩まで」

 リリアはソファへ座った。

 カイルは机の上の書類を取る。

「先輩も待つんですか?」

「そのつもりだ」

「忙しくない?」

「問題ない」

「三年生ですよね」

「ああ」

「卒業試験とか」

「まだ先だ」

「でも勉強大変そう」

「お前に心配されるほどじゃない」

「そうですか」

 リリアは鞄から本を取り出した。

「じゃあ待ちます」

 カイルも向かいの椅子へ座る。

 静かになる。

 リリアは本を読む。

 カイルは書類へ目を通している。

 しばらくして、リリアは顔を上げた。

「クロフォード先輩」

「何だ」

「先輩って、卒業したらどうするんですか?」

 紙をめくる手が止まった。

「急だな」

「三年生って聞いたら気になった」

「騎士団か魔導院に入る予定だ」

「どっち?」

「まだ決めていない」

「王都?」

「恐らく」

「じゃあ卒業しても会えますね」

 紙が止まった。

 リリアは首を傾げる。

「どうしました?」

「……なぜ、会う前提なんだ」

「会わなくなるんですか?」

「いや」

「じゃあ会うでしょ」

 カイルは何も言わなかった。

「クロフォード先輩?」

「お前は」

 そこで止まる。

「何?」

「……何でもない」

「禁止候補です」

「何だそれは」

「アレン先輩にも言いました」

「アレンに?」

「みんな『何でもない』って言いすぎなので」

「そうか」

「だから言って」

 カイルはしばらく黙っていた。

 それから、珍しく諦めたように息を吐いた。

「お前は、先のことを簡単に話すなと思っただけだ」

「なんで?」

「……簡単じゃないからだ」

「卒業後に会うのが?」

「ああ」

「でも、会いたかったら会いに行けばいい」

「そうできないこともある」

「何か事情があるなら別ですけど」

 リリアは本を閉じた。

「私は会いたい人には会いに行きますよ」

 カイルの目が揺れた。

「迷惑?」

「違う」

 すぐに返ってきた。

「ならいいです」

「……」

「先輩も会いたくなったら来てください」

「俺が?」

「はい」

「お前に?」

「他に誰の話してたんですか」

 カイルは目を伏せた。

「……分かった」

「約束?」

「約束だ」

「先輩、約束好きですね」

「できない約束はしないだけだ」

「覚えてます」

「そうか」

 ほんの少しだけ、カイルが笑った。

    
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