私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
始まりと初デート
『なら――君が僕の恋人になる?』
確か始まりは、そんな言葉だった。
夜遅くまでの残業で、ハイスペックかつイケメンな上司とオフィスに二人きり。
突発的なトラブルの対応をようやく終えて互いに安堵の吐息をついたとき。
『すみませんでした、こんな遅くまで付き合っていただいて。ご予定とかありましたよね。恋人とデートとか……』
そんなふうに佳穂が余計な言葉を最後に付け足してしまったのは、ちょうどその日の昼に噂を聞いていたからだ。多くの女性から想いを寄せられるこの上司――八代雅芳は告白されるといつも同じ文句で断るらしい。いわく〝恋人がいるから〟と。
それで密かに意気消沈していたこともあり、ついポロリと口から出てしまったのだ。
しかし、それを聞いた雅芳は予想外の反応を見せる。
『デートをするような相手は、今はいないな』
ゆるりと弓なりに唇を曲げた彼は、シルバーフレームの眼鏡を押し上げて、そんなことを口にする。レンズの向こうの目が意味深な笑みを浮かべていた。
え? と瞳を瞬く佳穂の表情を彼は切れ長の目で観察するように見つめたあと、淡く微笑む。
確か始まりは、そんな言葉だった。
夜遅くまでの残業で、ハイスペックかつイケメンな上司とオフィスに二人きり。
突発的なトラブルの対応をようやく終えて互いに安堵の吐息をついたとき。
『すみませんでした、こんな遅くまで付き合っていただいて。ご予定とかありましたよね。恋人とデートとか……』
そんなふうに佳穂が余計な言葉を最後に付け足してしまったのは、ちょうどその日の昼に噂を聞いていたからだ。多くの女性から想いを寄せられるこの上司――八代雅芳は告白されるといつも同じ文句で断るらしい。いわく〝恋人がいるから〟と。
それで密かに意気消沈していたこともあり、ついポロリと口から出てしまったのだ。
しかし、それを聞いた雅芳は予想外の反応を見せる。
『デートをするような相手は、今はいないな』
ゆるりと弓なりに唇を曲げた彼は、シルバーフレームの眼鏡を押し上げて、そんなことを口にする。レンズの向こうの目が意味深な笑みを浮かべていた。
え? と瞳を瞬く佳穂の表情を彼は切れ長の目で観察するように見つめたあと、淡く微笑む。
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