私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 佳穂は曖昧な笑みを浮かべると、雅芳と目を合わせられないまま口を開いた。

「その、まだ交際を始めたばかりですし……仕事中に言い間違えても困りますから、今はそのままで」
「……そうか。分かった」

 彼の声音は思ったよりも穏やかに響いて、だからきっとこれが正解だったのだろうと佳穂は思った。

 本当は、雅芳さんと呼びたかった。でもそうするのは、まだ早すぎる。自分の気持ちに彼が追いついてくれるまで、待たなければ。
 幸い彼はゆっくり関係を深めていこうと言ってくれている。だから、順調に交際を続けていけば、いつか呼ばせてくれるだろう。
 今は彼が自分との関係を前向きに捉えてくれている、それだけで満足だ。

 こうして二人の初デートは、とてもお行儀よく終わった。
< 12 / 21 >

この作品をシェア

pagetop