私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
「カフェも考えたんだが、向かい合って座っていると、君はまだ緊張するみたいだから。歩きながらのほうが話しやすいかと思って」
「……そんなに分かりやすかったですか?」
「少なくとも僕には」

 さらりと言われて、佳穂は言葉に詰まった。
 初デートでは、彼の顔をまともに見られず何度も料理へ視線を逃がした。だって仕方がない。相手はずっと憧れていた人で、ただでさえ麗しい容姿の持ち主なのだから。その相貌を見つめているだけで、その瞳に自分が映っているのを確かめるだけで、胸がいっぱいになってしまうのだ。
 幸い二人きりの食事には少しずつ慣れてきているが、カフェで長時間となるとまた別であろうことは容易に想像がつく。
 やはり彼にはいろいろと筒抜けのようだ。恥ずかしい。けれど、自分のためにそこまで考えて行き先を選んでくれたのだと思えば、胸の奥がくすぐったくなる。

「今はバラやダリアが見頃みたいだ。まずはそちらへ行ってみようか」
「……はい」

 答えた直後、すっと伸びてきた手が佳穂の手を取った。

「えっ」

 雅芳はさも当然のように指を絡め、そのまま歩き出す。

「どうした?」
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