私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 そうするうちに、同室の社員は一人、また一人と上がっていき、ふと顔を上げると雅芳と二人きりになっていた。
 その彼はまだしばらく残るつもりなのだろう、マグカップにコーヒーを淹れ直してきて一服している。

 佳穂は、今がチャンスかもしれない、と思った。
 手元はちょうど今日中の案件を終えたばかりである。
 パソコンの電源を切り、荷物をバッグにまとめてデスクに置いた佳穂は、窓際でコーヒーを飲んでいる雅芳にそっと近寄った。

「課長、少しだけ、いいですか」
「どうした?」
「あの、仕事の話ではなくて、プライベートなことなんですが……」

 職場で私的な話題を持ち出されるのが意外だったのか、雅芳の瞳がわずかに大きくなる。
 佳穂は一瞬、どう言おう?と考えた。
 けれどすぐに、どう繕っても結局言うことは同じだ、と思い直す。
 むしろ、下手にもったいぶらずに言ってしまったほうがいい。
 佳穂は静かに息を吸うと――

「私と別れてください」

 きっぱりと言い切った。
 直後、二人の間に無音の沈黙が横たわる。
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