私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 彼はあまり社交的ではないが、冷たいわけではないのだ。むしろ誰にでも平等に気を配り、必要とあれば手を差し伸べる。それが自然にできるから信頼を集めるし、密かに慕っている人も多いのだろう。

 佳穂もまんまとその一員に加わってしまったというわけだ。

 それが理解できてからは、自分も彼にとってはその他大勢と同じなのだと思うようになっていた。



 ――なのに、どうしてこんなことになったんだろう。

 きらびやかな夜景の望めるホテルのレストラン。その一席で佳穂は、ナイフとフォークを扱う恋人の優雅な手つきをぽーっと眺めていた。

 佳穂が入社してから四年。その間、雅芳は異例の速さで出世し、今や課長になっていた。佳穂の直属の上司である。
 そういう関係だから、ほぼ毎日なんらかの言葉は交わすけれど、相手は会社中の女性から憧れを集めるハイスペック男性だ。彼との間に色恋を意識するような空気が漂うことなどあるはずもなく、二人の関係はごく普通の上司と部下、それだけだった。この片思いが実る可能性など万に一つもないはずだった。

 それが変わったのは一昨日の夜。

『なら――君が僕の恋人になる?』
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