私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
「褒めすぎ、だと思います……私はそこまで聖人君子ではありません……」
「そうだな、そうかもしれない」

 雅芳は淡く微笑んで素直に肯定する。

「僕が本気で君が欲しいと思ったのは――これを言ったらいやな記憶を蒸し返してしまうと思うが、取引先との会食でセクハラまがいのことを言われたことがあっただろう、あのときだ。僕はそのとき上司の立場でしか庇うことができなくて、君は会食が終わってもどこかこらえるような顔をしていた」

 そのときのことは佳穂もすぐに思い出した。女であるというだけで侮られて、悔しくてたまらなかった記憶。

「あ、あのときは……」

 もし佳穂が傷ついている姿に庇護欲をそそられたというなら訂正しておかねばならない。口を開きかける佳穂に、雅芳は、分かっている、と言わんばかりに頷く。

「傷ついているように見えなくもなかったが、たぶん、あのときの君はとても腹を立てていた。そうだろう?」

 首を傾けて確認するように尋ねられ、佳穂は苦みの混じった顔で微笑んだ。

「……よく、分かりましたね。うまく隠せていると思ってました」
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