私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 自分との初デートのためにわざわざそこまでしてくれたのだ。
 そのことに舞い上がるような嬉しさを感じるものの、それをどこまで表現していいか悩んでしまうのは、目の前の彼が実にスマートであるがゆえに、その奥の感情が見えづらいからだ。

 そもそも雅芳はなぜ佳穂に交際を持ちかけたのだろう。実は彼も佳穂を想ってくれていた――なんて発想をこのパーフェクトな男性相手にいだくのはさすがに夢見がちすぎると思う。
 佳穂は食事を進める手を止め、思い切って切り出した。

「あの……課長。一つ、聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「どうして課長は、私を恋人にしてくれたんですか」
「どうして、とは? そうしたかったから以外に理由があるのか?」

 それはつまり、佳穂を恋人にしたかった、という意味にほかならず、佳穂はじわりと頬が熱くなるのを感じた。だが内心ですぐに、いやいや、と自分で待ったをかける。問題はそこに至った理由なのだ。

「だって、課長なら、相手はいくらでも選べるでしょう」
「……まあ、選択肢がなかったとは言わないが」
「だったら、どうして私なのかなって」

 そこで初めて、雅芳の返事が途切れた。
< 9 / 21 >

この作品をシェア

pagetop